MMAにおける反則の損得勘定【ビスピンを事例に】


 グラウンド状態の相手の頭部を蹴る、ケージを掴んでテイクダウンを防ぐ、試合後に対戦相手(の方向)に向けてつばを吐くなど、UFC127で悪行三昧を働いたマイケル・ビスピンにちなんで、MMAではこのような悪行がなぜなくならないのかを、Cage Potato が冷静に分析している。


・・・ビスピンは試合中にルールを2度破ったわけだが、それでも最後に勝ち名乗りを上げてつばを吐いてみせた。その上UFCからの勝利者ボーナスもきっちりもらっているのだから、まるで悪事の褒美である。総合的に考えると、反則するのも悪くないということになってしまう。実は、ユニファイド・ルールのもとで試合がどう裁かれるのかを考えたときに得られる結論は、「ルールを守るより、破ったほうがトクだ」ということになってしまうのだ(「名誉」とか「フェアプレイ」といったコンセプトはひとまず横に置く)。理由は3つある。

1 たいてい、反則をした方が勝つから

アイポークや金的蹴りをやった方の勝率を正確に知りたいものだが、やった方の勝率が高いことは間違いない。なので、試合をフィニッシュ出来る自信があるなら、統計的に言って反則を犯すメリットはデメリットを上回る。失格にさえならなければいい。ビスピンは金網をつかんでテイクダウンを防いだが、リベラのようなアンダードッグと対戦する場合には、割のいい反則だったといえる。

2 どういうわけか、反則をされた側が弱く見えるから

上の裏返しで、反則攻撃を食らうことほど割の悪いことはない。頭に膝蹴りを食らったら、目覚めたときにはダウンしていて、頭の中の蜘蛛の巣をはらいながら、自分のダメージを検討しなければならない。その間、対戦相手はコーナーで休憩し、ファンに拳を突き上げて、この待ち時間は自分のせいじゃないぜというふうにアピールしていたりする。ファンも声援を送ったりする。

レフリーもドクターも、ファンも対戦相手も、禿頭の会社オーナーも、みんなが少しでも早く再開されることを願ってる。ドクターに続けられるかと聞かれたら、イエスと言うしかない。そうじゃないと弱虫に見える。どれほどダメージを食らっていても、やめるわけにはいかない。さらにひどいことに、ゆっくり休めないうちに試合再開を急がされることになる。

ホルヘ・リベラが何分休んだかご存じだろうか。2分8秒である。その7分25秒後に、リベラはTKOで敗戦した。試合後のリベラは病院に直行し精密検査を受けなければならなかった。ダメージをこらえて試合をしていた可能性はないだろうか。とにかく、反則をする側にアドバンテージがある。

3 多くの場合、これと言った罰則もないから・・・というか、罰則のルールをちゃんと知っている人があまりいないから

反則を犯しても、せいぜい減点、たいていは警告だけである。これでは、たとえばストライカーが倒されそうになったら、フェンスを掴まない方がおかしいくらいである。反則で相手がひどいダメージを負ってしまった場合でも、しばしばレフリーもドクターも、その後の手続きを知らない。UFC解説者のジョー・ローガンですら、「リベラには最大5分間の休憩が与えられるのだったかな、それは金的の場合だけたっけ・・・」などとはっきりしない。つまり、反則をやらかすと、とにかくリング上ではカオスが巻き起こり、「早く再開しなければ」というプレッシャーだけが高まるのである。やはり反則する方がトクである

最後に、ホルヘ・リベラのコメントを紹介。イリーガルな膝蹴りを食らった後、「凄く痛かったよ。でもお客さんはみんな、試合を見に来てるんだよな。さんざん宣伝されて、わざわざ見に来てるんだから、こんな風に試合を終わらせることは出来ない・・・あのときは自分の気持ちだけじゃなくて、そんなことを考えていたよ。ホントは、あと何分かの休憩を取って回復させたかったんだが、ドクターが続行できるかとせっつくので、ショー全体のことを考えてしまったんだ」


CagePotatoが指摘しなかったもう一つのメリットとして、ビスピンの元にはいま、ミドル級トップファイターたちから続々と対戦のラブコールが届いている。なにせヒールの成敗役はおいしいからね。

ヴィトー・ベウフォート

ベガスに帰るため空港に向かってるビスピント5月に試合をしたい。出来るだけ早く試合をしたいんだ。仕事しなくちゃ。



チェール・ソネンはUFCマッチメーカー、ジョー・シウバに依頼状を提出。

もしヤツと話す機会があったら、住み込みの馬鹿マイケル・ツバピンに伝えておいてほしい。俺様が暴走列車のようにつっこんで、マッシュポテトのようにヤツを金網でこなごなに押しつぶしはじめたら、俺様の頭にヒザをぶち込むことはかなり難しいとね。万一オクタゴンでほんの少しの間でもお目にかかれたら、ということだけれど。

ああ、それと、僕のセコンドにはつばを吐かない方がいいよ。みんな、僕と同じくらい、君のことをしばきあげることができるからね。



>個人的には、反則はよくないことに決まっているし、ビスピンはずるいなあともちろん思うのだけれど、やってしまった以上、メリット・デメリットを含めて物事が回り始めるというのは、現実として淡々と受け入れましょうという立場を取る。いや、むしろちょっとおもしろがるかな。だって、淡々と試合をされるよりも、次の試合がぐっと楽しみになるじゃないですか。要するに、すべてはビスピンの次戦にかかっている。ピュアスポーツ主義の人も、ビスピンが次戦にきっちり勝てば、バッドボーイにふさわしい実力があると言うことなのだから、それで納得するだろうし、僕のようなプロレス的な見方をする人でも、ビスピンが次戦に負ければ、なんだ、「単なる道化」だったのかとみなして関心を失っていく。要するに長期的に見れば、実力がないのに、ヒール役得だけを得ているような選手は、どうせ消えていくものなので、短期的なアングルには目くじらを立てるよりも楽しんだ方が得だろうと言うことだ。リベラにしても、この試合結果が実力を反映していないと思うのなら、リマッチをアピールすればいい。最高のビジネスにもなる。それなのに今のところ、リベラ陣営からはリマッチという声は聞こえてこず、口げんかを理屈で言い返すばかりである。リマッチがないなら、言い返す必要性はほとんどない。一体何をやってるんだろうと思うばかりである。

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 Headkick Legend に、エクストリーム・クートゥアのキャッチレスリングコーチ、ニール・メランソン(Neil Melanson)氏のインタビューがあった。なんでもエクストリーム・クートゥアには、柔術コーチはおらず、メランソン氏がグラップリングを教えているのみなのだという。プロレスファンの琴線にも触れる内容だったので、ごく一部を抄訳する。


Q キャッチレスリングとノーギ・グラップリングの違いを教えてください。

A 「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」はノーギ・グラップリングの原型だ。本当の原型はほとんど廃れてしまい、出来る人もほとんどいなくなった。私は自分のことをキャッチレスラーだと思っているが、それが本当のキャッチレスリングかと言われれば、そうでもないと思う。キャッチの原型は、私が「マット・レスリング」と呼ぶものの応用なんだ。レスリングの人たちはテイクダウンのことばかり言うが、実はたくさんのマット・ワークがあるんだ。レスリングのマットワークはキャッチに由来している。ノーギ・グラップリングは柔術の影響を強く受けており、キャッチの要素はほとんどない。

キャッチレスラーはアタマと首をロックすることによって、相手の身体を特定の方法でコントロールすることに焦点を置いている。柔術ではネックロックは違反だから、技術体系が違う。ブラジリアン柔術であれ、柔道であれ、キャッチレスリングであれ、それぞれのアートは、自競技のルールセットで使いこなしたときに最高の結果をもたらすようになっている。ただ、試合時間の短いノーギ・グラップリングは、どんどんオールドスクールなキャッチレスリングに転じてきていると思う。それが変化の方向性だ。今の柔術にしても、ネックロックやアームロックも含むようになってきているから、やがてはキャッチレスリングのフォーマットと同じになっていくと見ている。

Q ビル・ロビンソンと練習をしたこともあるそうですね。

A ビル・ロビンソンとは知人を介して練習したことがある。彼から学ぶのは楽しかったよ。ビルはここで僕やランディに、古い技術を教えてくれた。ぶっとんだよ、ほんとに。あのときは楽しかった。また近いうちに会えると良いなと思う。ビルはグラップリングの歴史に関しては歩くデータベースのような人だし、ウィガン・スタイルはユニークでとんでもなくクールだった。カール・ゴッチが亡くなったのは残念だった。亡くなる前に是非練習をしてみたかった。ゴッチの弟子たちには、どうかトレーニングを続けていて欲しい。

Q ブライアン・ダニエルソンとも練習したことがあるとか。

A そうだね、いまでもやっているよ。友達なんだ。ブライアンは紫帯といったところかな、どんどん良くなってきているんだけど、問題はプロレスの方が忙しいみたいで、あんまり顔を出してくれないこと。ヤツは強いよ。本物のグラップラーだ。ランディともロールしていたし、ヴィトーの練習にもつきあってくれたが、ホントにタフな男なんだ。もちろんプロレスの方でがんばって欲しいけど、彼は本物だからね。

Q あなたがベーチェット病(血管炎)を患う前は、ファイターになりたかったのですか?

A 僕は子供の頃から連邦政府の仕事をしたくてね。安定した仕事だし、スペシャル・エージェントを勤めるのは楽しかった。これからも長きにわたり、国のために働くのかなと思っていた。ところが格闘技にとりつかれてしまい、そんなことを全部放り出してしまったんだ。とにかく純粋な情熱だけで、どこまでやれるのか試してみたくなった。女の子にもてたいとか、有名になりたいということではなかったよ。ただ、身体がついて行かなくなった。いまはコーチ以上のことは出来ない。将来的には体調をみながら、レベルの高いグラップリング大会に出たいと思ってる。年を取りすぎないうちに、病気がひどくならないうちに、コーチ業をいったんお休みして、自分のことに集中して楽しみたいな、と言うのが僕の目標だ。

Q エクストリーム・クートゥアのグラップリング・コーチとして、どんな選手を教えているのですか。

A ランディ・クートゥアはもちろんいつも一緒だよ。フランク・トリッグ、ヴィトー・ベウフォート、ゲイリー・メイナードにも教えてる。ベラトールのマイク・チャンドラーは将来有望だね。フォレスト・グリフィンに教えたこともある。それに、ライアン・クートゥアだ。

Q ランディ・クートゥアは、マチダ・リョート戦が迫っています。

A ランディはいま、キャッチレスリングに夢中になってる。マチダのグラウンドもすばらしいが、実際にグラウンドの展開になったら、ランディが有利に進めるんじゃないかな。マチダ戦での最大の課題は、あのスピードと動きだ。この点については、具体的な戦術を考えておかないと行けない。マチダの打撃と、その後のバックステップは素晴らしい。マチダを模倣した選手とのスパーリングを重ねているよ。

Q ランディは現役を続けていくつもりなのでしょうか

A ランディはMMAが大好きだが、俳優の仕事もとても好きみたいで、本気で取り組んでいる。ただハリウッドは、手際が悪いことがあって、時にイライラしているみたいだ。たとえば、役をもらって撮影準備を整えたというのに、次の週になると急にキャンセルとか延期の連絡が来たりする。ランディは滅多に諦めたり怒ったりしないんだけどね。

でも戦うことも好きだし、今でも現役選手そのものだ。キャッチのスキルを学んでいるということは、試合で使ってみたいと思ってるんだと思う。そう言うことを楽しんでいるんだよ。マチダ戦を望んだのはランディの方だった。UFCはランページ戦を組みたかったみたいで、個人的にもランページ戦はおもしろいカードだと思ったんだけど、ランディは「ランページと戦うとタイトル戦線に復帰してしまうことになる。それはもう勘弁して欲しい」ということだった。今回は、相手がマチダだから実現したようなものなんだよ。


Mastering Triangle ChokesMastering Triangle Chokes
(2011/05/10)
Neil Melanson、Marshal Carper 他

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カナダのオンタリオ州でMMAがめでたく解禁され、4月30日にはUFC「GSP vs シールズ」が進出するが、オンタリオ州初のMMA大会はUFCに先だって4月2日に開催される「MMA: The Reckoning」という大会となった。カードがなかなかに渋くて、メインが「ジョシュ・バークマン vs ジョーダン・メイン」、このほか「アントニオ・カルバーリョ vs トニー・ハービー」、クリス・ホロデッキ、戦極ファイターのニック・デニスらが出場するという。その翌週には Maximum Fighting Championship 大会が開催、ドリュー・フィケット、マーカス・デイビス、デビッド・ヒース、マービン・イーストマンらが出場するという。なんか、日本はオンタリオ州にも負けてる気がする・・・(CagePotato)

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