We Love Nick!


米MMAサイトのあちこちで、ニック・ディアズが論じられている。みんなニックが大好きのようだ。まるでラブレターのような三篇を抄訳で紹介してみる。


UFC137の大会後記者会見で、ニック・ディアズは望んでいたタイトルマッチを与えられた。しかしニックは、延々と不満をぶちまけ続けた。しかし私は、ニックのぼやきを支離滅裂だとは思わなかった。これがニック流の論の建て方なのだ。彼の議論は、A地点からB地点まで、まるで酔っ払った16歳の少年が初めてプレイしたビリヤードのボールのように右往左往するのだ。それでもニックの議論の要点は単純で、それはつまり「別に笑うことじゃないぞ」ということなのだ。


何を笑うのかといえば、それはおそらく人生だ。いや、ほんとはよくわからないのだが、ここではそういうことにしておこう。記者会見の中でニックは、低所得地域の自宅から、高所得地域に向かってランニングをしていると語っていた。ニックにとって、これは恥ずべきことなのだ。しかしひどいことに、これを聞いた報道陣は笑ったのであった。


当たり前のことだが、ニックは怒れる男だ。対戦相手を敵視するメンタルがある。ニックはGSPのタイトルだけをねらっているのではない。ニックにとってGSPは、試合を回避するために怪我をフェイクする男、すべてを犠牲に練習している自分から稼ぐ機会を取り上げた男なのである。不安と敵視を自らに押しつけると、試合を得るためには、ニックは悪役を演じるしかなくなってしまったのである・・・


ニックのロジックを冷笑することは簡単なことだ。確かにバカバカしい。しかし、ボクシングに詳しい人にとってはお馴染みのバカバカしさで、対戦相手と戦う前に、自分と戦うのが大変な選手にはよくあることなのだ。こういう「リアルファイター」に慣れていないのはMMAメディアの方なのである。


ニックが怒りを失ったら、こんな風には戦ってくれないんじゃないかと思えてならない。ニックを批判する人のいうことは全部正解だ。ニックはスポイルされているし、パラノイドだし、自分勝手だし、非現実的だ。そんな性格がパフォーマンスに現れている。ある面をほめてある面をけなすなんて、偽善的かもしれない。そして、私はニックの態度は嫌いだ。でもニックには、お願いだから変わらないでほしい。

(出所) UFC 137 Fallout: 'It's Not Funny' Says Nick Diaz in So Many Words (Headkick Legend)


ニック・ディアズは暴力の男だ。そして怒っている。そして、少し混乱している。彼の世界は感情だけで組み立てられている。ニックの世界では、犠牲者は常に彼だ。まったくしいたげられている。試合には汚れた心で臨む。彼はスポーツをしているわけではない。試合とは善悪を分けるリアルファイトに相違ない。彼こそ善意であり、まわりはすべて、ニック・ディアズを押さえ込むための筋書きの一部なのだ。


友達であるBJペンとの試合でも、ニックはダークな側面を見つけなければならなかった。そこで彼は、セコンドのJDペンやリーガン・ペンをカツアゲしてもかまわない物語を作り出した。シーザー・グレイシーに忠実なディアズは、ペンがラルフ・グレイシーと別離した過去をモチベーションに使ったのだった。なかなかに回りくどい話ではあるが、ディアズは何とか自分を納得させてペンを病院送りにした。試合はすばらしかった。しかしディアズ自身はそうみていない。


「ファンにとってはいい試合ではなかった」。ディアズは報道陣に対し、友達同士が戦うことはよくないと説明した。「そんなもの、自分でもみたくない。友達同士で戦って、試合後にはハグをしあう・・・なんのこっちゃだよ。そんなもの、誰もみたくないんだよ」


ディアズの周りには常に陰謀が渦巻いている。数年前にペンがディアズを練習に招待したのは、将来二人が戦うときの資料集めのためだったのだろうか・・・ディアズのトレーニングパートナーが出し惜しみをするのは、金が足りないからだろうか・・・オクタゴンで勝利を収めた後、ジョー・ローガンのインタビューに答えるニックはあきらかに、肩越しに左右に目をやって警戒していた。ラスベガスやストックトンに秘密の忍者が潜んでいたとしても、ディアズに飛びかかることだけはできそうにない。


記念すべき夜だった。ニックは、伝説の男BJペンに買ったのだ。でもニックはそんな風にはみていない。お祝いなんかしている場合ではない。キャリアの高みに達しても、幸せはするりと逃げていく。ダナ・ホワイトがディアズのタイトル挑戦を発表したときにも、ディアズは周囲から襲われはしないかと用心していた。


「ほらね、こうしないと試合を組んでもらえないだろ。そのためにわざとやったんだ」ディアズの顔には一度もほほえみは浮かばない。「悪役を演じた。指を指して、俺を悪者にしろよ。みんな、俺がやられるところをみたいんだろう?」


もしかしたら、これがニック流のやり方なのかもしれない。お祝いは誰にでもできるが、ますます強くなるために自分をかき立てることは難しい。GSPはいますぐトレーニングを開始した方がいい。ニック・ディアズは一歩先を行っていて、すでにタイトルマッチに向けて気持ちを高めている。スーパーボール・ウィークエンドまでにディアズは、GSPはカナダ版のポルポト派だ、などといった物語を作り出すだろう・・・GSPがしっかり準備をして試合に臨むことを希望する。なぜなら、ニック・ディアズは準備万端だからだ。

(出所) UFC 137: Conspiracy Theories Drive Nick Diaz To Greatness (MMA Nation)


BJペンを救急車に放り込んでも、カーテンの向こうにいる反対勢力のフォースは止むことがなかった。コンジットから座を奪い取ってのGSP戦が発表されても、やはりそうだった。


ニックはカーテンの裏側を凝視し、自分が悪役として配役されたことを悟った。仕組みはすぐに見えた。何でもお見通しなのだ。


でもその時点で、ニック・ディアズは悪役ではない。ニックはニックなのだ。悪役というのは、他人の気に障る人のことだ。ニックはただ、自分自身の現実から身を守っているだけなのである。もしニックがストックトンに住んでいなくて、ダメ人間たちが歩道でたばこの吸い殻を拾っていなかったとしたら、逆に彼は自分の居場所を失ってしまうだろう。彼がストックトンから高級住宅街に走っていき、噴水やら裏庭やらのある豪邸を眺めるとき、彼のイライラは頂点に達する。これまでに自分が受けた軽蔑を思い、メイウエザーの億万長者ぶりを思い、うまくやって笑っている奴らのことを思うのだ。


怒りの種はニックの中に常にある。そしてニックはけして謝らない。そこが僕らがニックを大好きな理由なのだ。あるいは、紙一重で大嫌いな理由なのだ。


ディアズが噴水なんかほしいわけがない。貧民街に暮らし、星を見上げているディアズが最高なのだ。あのパラノイアはニックの燃料だし、嫉妬はハングリー精神の源だ。ニックはストックトンを出るだけの金はとっくに持っているだろう。ただニックは、自分の銀行口座の存在を知らないだけだ。


ディアズは偶像破壊者だが、別になろうとしているわけではない。ならざるを得ないのだ。偶像を破壊するたびに、敵はますます大きくなる。彼は仕方なく、悪役を引き受けて戦う。そして勝つ。しかし勝ってみたところで、傷口に塩を塗り込むだけのことだ。なるようにしかならないのだ。


ディアズが状況に対して怒っている限り、僕らには正真正銘のディアズ、唯一無二のディアズがいる。


(出所) Why Diaz is being such an impossible Diaz (ESPN)


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●レスリング・オブザーバ最新号が、UFC137「ペン vs ディアズ」のPPV売り上げの速報推計値が25万5千~30万件程度とみられていると報じている。UFC136(アルド vs フロリアン、エドガー vs メイナード)と同程度。ファンの目にはどちらも結果的にはとてもおもしろい大会だったので、首をひねりたくなる低成績である。


●チェール・ソネンがラジオインタビューで、「今現在、業界でもっとも売れる男は俺だ。歴史上、こんなにたくさんのチケットを売り、PPVを売り、グッズを売る男はいなかった。GSPと俺とでは、キンボとアリくらいの差がある」と吹かせている


●ベラトールFCのビヨン・レブニーが、エディ・アルバレスが11月のマイク・チャンドラー戦で勝利すれば、来年2月をめどに青木真也戦を実現させるとコメントしている


北京で石井和義氏が新K-1会見、中国メジャーポータルサイトで大きく扱われる~動画もあり(カクトウログ)

日本でも結局スポーツ新聞を超えての報道はほとんどみられなかったように思うし、アメリカの格闘技サイトでも、普段から日本をウォッチしているような書き手から、記者発表の範囲の内容の紹介記事が出たくらいで、それ以上の情報や分析はみられていない印象。
ただ、このニュースは中国で大きく扱われればそれでいいわけなのだろうから、これは吉報。


*****

レスリング・オブザーバが Sports Business Journal をひいて、アメリカでのUFCの客層を分析している。だからどう、と言うこともないが、こういうデータは念のため記録しておこう。

年齢層

~17歳 15%
18~34歳 56%
35~49歳 22%
50歳~ 7%
年収
~3万ドル 13%
3~6万ドル 26%
6~10万ドル 31%
10万ドル~ 8%
性別
男性 63%
女性 37%

UFC (参考)WWE
ウェブサイトアクセス数 月700万 月1320万
フェイスブックファン数 630万 600万
テレビ放送実施国数 132カ国 145カ国
全世界リーチ 597万世帯 500万世帯
テレビ放送言語 21言語 30言語


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