シウバ vs ソネン、濃密決闘終わる



アンデウソン・シウバ def チェール・ソネン

あまりにも濃密な決闘だった。1Rのソネンのテイクダウンは、まさに雷が落ちたかのような圧倒的な力強さとスピードだった。アンデウソンが両腕ごと、折りたたみ携帯のように持ち運ばれ、マットにたたきつけられていた。

誰しもその打撃を警戒し、容易に踏み込むことの出来ないアンデウソン相手に、一秒たりともひるむことなく接近し、身体をつかみ、グラウンドに持ち込もうとする。ソネンの迷いのなさと決意の強さを目の当たりにすると、リスペクトを感じない方が難しい。こうして、しゃべったことをちゃんとやるから、さらにしゃべりに説得力が出る。ただのおしゃべり野郎ではない。

バックフィストに関しても、結果論で言えば不用意だったし悔いは残るのだが、目の前にアンデウソンがいたら、ああいう動きは本来は、出来ないのではないか。そこまでの自信と勝算と勢いがあっての奇襲だったと見るべきだろう。

そのソネンの小さな失策の穴をまたしてもこじ開けたアンデウソンも、やはりどうしようもない化け物である。個人的趣味を言えば、その道化ぶりはいちいち鼻につくのではあるが、運動選手としては異常であると言わざるを得ない。

アンデウソンのあのシャイニング・ウィザードのような膝蹴りは、セガールの予告通り、一見反則に見えるが、そうではなかった。そんなオチもまた、アンデウソン的にはまっていて、いまいち乗れないのであった。

アンデウソンが2010年4月のアブダビ大会で、アブダビの株主の前でダミアン・マイアと対戦した際、5Rに渡って踊りながらマイアをバカにしたような仕草を繰り返すという出来事があった。その頃のアンデウソンは、すでにミドル級を一掃し、これといった強敵も見当たらず、その様子はまるで退屈した天才児であった。怒り狂ったダナ・ホワイトは、こんな試合をやるなら、タイトルマッチを前座で組んでやると息巻いていたほどである。

これを救ったのが、同年8月のチェール・ソネン戦だったのである。ソネンにああいう勝ち方をした後は、シウバへの評価も180度変わったのである。ソネンがのし上がるためにはアンデウソンが必要であったことは確かである。しかしアンデウソンもまた、同じくらい、ソネンを必要としていたのである。

今回ソネンが勝てば、ラバーマッチという声も上がったのだろうが、ソネンの出世物語は残念ながらこれで結構ちゃんと終わってしまった。今後は新しいストーリーを求めて、階級変更をしてはどうかと希望したい。減量には苦労するタイプらしいが、ウエルターがおもしろいと思う。

***

試合後記者会見の映像を見た。UFCの試合後記者会見は、一仕事終わった人たちのまったり感がなんとも好ましくて、見ていて楽しい。

♪♪
記者 ティト、フォレスト・グリフィンにインタビューをされていましたね。

オーティス クソくらえだよ。俺はあいつよりうんと長いこと、このスポーツをやってる。15年前、1997年5月3日、俺に初めてインタビューしてくれたのはジョー・ローガンだった。そのとき俺はこう言ったんだ。俺はこのスポーツに足跡を残すぞ、って。デビュー戦の時だった。なのに、ひとっ走りしたあとのフォレストが、あんなことをするなんて・・・別に文句を言うこともないけど、ジョー・ローガンのインタビューを受けたかった気持ちはあるよな。

グリフィン 心から謝罪します。何を考えていたのか、自分でもわからない。ごめんなさい。

記者 ダナ、アンデウソンはもう38歳です。これからどんな風に起用していくつもりですか。ビッグファイト限定ですか、それとも普通のペースで防衛戦を行っていくのですか。

ホワイト アンデウソンはもうすぐ40だというのに、まだ衰えを見せていないのは驚くべきことだし、こんな選手は前例がないよ。MMAは本来、若い人のゲームなんだ。みんな年をとる。ある日試合に姿を見せると、ぐっと老けていることがあるんだ。昔のようなスピードでは動けなくなる。誰でもそうなる。避けられない。でもアンデウソンにそんな兆候はない。これからのアンデウソンのブッキング、さてどうしたものかな。

本人が言い出さない限り、階級を上げろとも下げろとも言うつもりはない。

アンデウソンとの交渉は、まるで芸術家と交渉しているみたいなんだ。難しくて複雑だが、私は好きだ。

記者 他の選手がソネンから学べるプロモーション術というのは・・・

ホワイト (質問を遮って)いいか、一つはっきりさせておくぞ。確かにチェールはおもしろいし、頭のいい男だ。でも今回の試合を売ったのは、前回の試合だ。そこを間違えるなよ。チェールがクレイジーなことを言ったから試合が売れた訳じゃないんだ。

記者 ソネン、あのバックブローには悔いが残るのではないですか。

ソネン 試合映像を見直してみないとわからないよ。映像を見直して、改善すべきことを改善していくのみだ。

記者 中国大会が発表されました。

ホワイト 日本に次いで、中国大会も是非成功させたい。実はロシア大会も Very Soon なんだ。あんたらが思っているよりうんと早く実現するぞ。

記者 チェール、アンデウソンのヒザは反則ではなかったですか。

ソネン 自分が決めることじゃないし、実はそういう細かいルールには無頓着でね。反則か否かはどうでもいい。

記者 ティト、これからの人生でどんなことをしていこうと考えていますか。

ティト まずは休暇だ。ガキと嫁さんを連れてな。釣りもしたい。その後はなんだろう。解説かな。俳優学校に行くのもいいかなと思ってる。普通の暮らしが出来るのはうれしい。好きなように食べ、好きなように飲みたい。

ホワイト 1か月でマット・セラのようになってしまうぞ(笑)。(別人のように太る、の意)

記者 ダナ、この間タイトルマッチで負けたばかりのチャド・メンデスが、コーディ・マッケンジーに勝ってしまいました。フェザー級に駒が足りないのではないですか。

ホワイト うーん、それは言えてるんだよ。メンデスにはもっと骨のある試合を提供しないと失礼だよな。

記者 フォレスト、今回の勝利を踏まえ、今後は誰と戦いたいですか。

フォレスト わからん。全然わからない。ティトの晴れ舞台に味噌を付けてしまったことを反省していて、そこまで考えが回らない。ジョン・ジョーンズの挑発をしないことだけは確かだ。

ホワイト コーディ・マッケンジーとではどうだ?(笑)

記者 チェール、試合後にはアンデウソンからバーベキューの誘いを受けていましたね。

ソネン ケージだろうがリングだろうが、格闘技では試合が終わったら握手をして別れる。自分はその流儀に従ったまでだ。まあでも、ブラジル人のファンはブラジルの選手を本当に応援するな。自国選手を応援しないのはアメリカだけだ。別にかまわんけどね。ブラジル人ファンのことは尊敬する。自分に向けられたブーイングも、まっとうな反応だ。

記者 ダナ、PPV売上の面ではどんな感触ですか。

ホワイト 間違いなく、過去最大の売上になっていると思う。UFC.comのアクセス数は今週、毎日のように新記録を更新していた。木曜日の記者会見のアクセス数は過去最高の100万だ。ゲート収入も新記録を達成している。あらゆる数値が上向き、あらゆるよい兆候が出ているんだ。

記者 アンデウソン、身体が続く限り現役を続けるつもりですか、それともある年齢で幕を引くことを考えていますか。

アンデウソン フィジカル、メンタルが伴っている限り、ずっと現役を続けるつもりだ。

記者 アンデウソン、多くのファンが、ジョン・ジョーンズ戦を望んでいますが。

アンデウソン NOだ。

記者 カン・リーに質問ですが、現役選手として今後どんな目標を持っていますか。

リー わからない。まずは身体を癒して、それから考えてみるよ。

ホワイト 私が通訳してやろう。カンはジムに戻って練習して、中国大会に出たいと言ってるぞ(笑)

記者 チェール、しばらく休むことになりそうですか、それともすぐに戦線に戻りますか。

ソネン 休暇はいらない。朝早く起きて、夜遅くまで働くのが好きなんだ。たしかに敗戦は厳しいが、試合で負けたのはこれが初めてではないし、いくら全力を出しても、戦いというのは5割は負けるんだ。時には堂々と負けと向き合わなければいけない。

ホワイト 最後に世界中から来てくれたメディアに御礼を言いたい。今回はメインストリームのメディアもたくさん来てくれた。今回の成功はみなさんのハードワークのおかげだ。いい夜を。

***

MMA Fighting のフォレスト・グリフィンのインタビューより。

  
Q フォレスト、試合後にどうして退場しようとしたのですか。

ティトにリスペクトを示すために、オクタゴンに戻るつもりはあったんだよ。ただ、感情的になって我を忘れてしまった。自分の試合ぶりにイライラしてね。ダナ・ホワイトに連れ戻されたよ。

Q 負けたと思っていたのですか。

よくわからんよ。2回倒れたしね。これまでの3戦、全部引き分けだったような気がするよ。

Q 自分の試合ぶりはどう評価しますか。

いいとは言えない。ティトは2R終わりと3R終わりにひどくガス欠していた。出だしはすごく強かったよ。

Q どうしてインタビューをしたのですか。

なんだかやりたかったんだよ。気持ちが先走ってしまって、悪いね。



Foxsportsのダナ・ホワイトのインタビューより。

Q 戦前のアンデウソンの暴走ぶりからは、ソネンが精神的には主導権を握っているとは思いませんでしたか。

ファンはおもしろいものだよ。多くのファンが、チェールは馬鹿馬鹿しいとか、一線を越えたとか、このスポーツにとって害だとか言ってた。アンデウソンが暴走し始めると、「もうアンデウソンのファンは辞めた!」とか言ってる。

これはファイトビジネスなんだよ。こういうことをするのが仕事なんだ。悪口を言うこともあれば、言われた方が怒ることもある。

Q アンデウソンの次の対戦相手は誰になるのでしょう?

アンデウソンの試合は何分か前に終わったばかりだぞ。もう次の試合を組めってか。しばらくはリラックスして余韻を楽しもうや。

Q ティト・オーティスの試合はいかがでしたか。予想よりずっとよかったとの声もあります。

ティトは年をとった。ティト・バッシングだと思ってもらってもかまわないが、本当にそう思ったよ。フォレストもそうだ。2人とも若者には見えなかった。

Q フォレストに聞いたところ、あなたにケージに引き戻されたと言うことでした。

「こら、何やってるんだ、おまえはメンヘルか」といって腕をつかんで連れ戻したんだよ。自分は怒っていたし、がっかりした。いいか、判定勝ちに落ち込むなら、控室でやってくれ。最後までオクタゴンに立ってろ。あんなもの、プロとしては自殺行為だよ。判定結果も聞かないでオクタゴンをあとにするなんて、頭がどうかしているのか?そしたら今度はマイクをつかんでインタビューを始めよった。あいつとは話をしないといけない。バカげている。今日はティトの記念日なんだ。おとなしくオクタゴン内で待機し、判定結果を聞き、ジョー・ローガンから質問されるまではマイクを持とうとするな。



*****

ティム・ケネディ

腕にグリースを塗りたくったり、相手のショーツをつかんだり、顔面に膝蹴りを入れたり、あれがチャンピオンのやるべきことかねえ?



ジョン・ジョーンズ

アンデウソンが僕との試合に興味がないと言ったんだろ。僕も同じ思いだ。尊敬しかない。




●通常の倍近い入場料金設定もあり、UFC148のゲート収入は650万ドル、2006年の「リデル vs. オーティス2」を110万ドルしのぎ、ネバダ州でのMMA興行収入のレコードとなった。ちなみにボクシングも含めると興行収入は史上35位だという。UFCのゲート収入の最高記録は、2011年カナダトロント大会(GSP vs シールズ)の1210万ドル。

●UFC148のファイトマネー。これはソネンが気の毒。営業努力を評価すれば、最も高給取りでもよいのではと思う。

アンデウソン・シウバ $200,000
チェール・ソネン 50,000、勝利ボーナス50,000
ティト・オーティス 250,000
フォレスト・グリフィン 125,000、勝利ボーナス 150,000
カン・リー 150,000
パトリック・コーテ 21,000、勝利ボーナス 21,000

ちなみにカン・リーの前回(UFC139バンダレイ戦)のファイトマネーは35万ドルだった。


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