岡見が期せずしてあばくUFCのタブー【社説】


岡見リリースに関するダナ・ホワイトのコメント

岡見はずっと我々と一緒だ。いつもタフガイでいてくれた。ただ最近は、UFCの門番のようになってきていた。岡見のことは好きだし、これはこれまで何度も言ってきたとおり、岡見に勝つと言うことには大きな意味がある。

ただ、岡見はここ一番を乗り越えて勝つことができなかった。UFCにはたくさんの選手が入ってきている。いつも言っているとおり、登録選手は満杯で、もっとチャンスをもらうべき選手がいるんだ。新しい選手を入れれば、だれかが出て行かないといけない。だからこそ、ここ一番の試合というのは重要なんだ。



Ali Abdel-Aziz、WSOFマッチメーカー
ユーシン・オカミ、あなたの家はWSOFにあります。



Ultimate Fighter: Team Sonnen Greets Okami


さて、みなさんはダナ・ホワイトの説明に納得できるだろうか。

UFCがスポーツだというなら、1敗しただけのランカーの解雇はどう考えても筋にあわない。岡見が現在6位である以上、単純なスポーツのロジックで言えば、それ以下の選手で1敗でもした人は全員解雇しなければつじつまが合わない。あるいは、ここ一番で勝てない男はダメだというなら、何度タイトルマッチをやっても勝てないユライア・フェイバーや、トップコンテンダーマッチで必ず負けるマイケル・ビスピンも解雇されないとおかしい。岡見解雇は、UFCが必ずしもスポーツロジックだけで運営されているわけではないということをハッキリと描き出している。UFCがスポーツリーグの統轄組織ではなく、単なる一興行会社に過ぎない以上、そんなことは最初から自明なことではある。ただここで問われるべきは、「どこまでスポーツロジックを徹底しているふりをするのか」という範囲の問題である。UFCのタテマエはあくまでスポーツロジックなのであり、その境界線はケーフェイ的なのであって、早耳情報なら無頓着に書き殴る米メディアも、この件に関しては慎重に論評を差し控える。しかしこの問題は、選手のイレギュラーなリリースや、キーマッチのマッチメイクの際に、折に触れて際どく牙をむく。

僕自身は実は、個人的趣味では、「どこまでスポーツロジックのふりをするか」というUFCなりの境界線の引き方には、おおむね満足している。これ以上スポーツに振っても退屈になりそうだし、これ以上エンタメに振ると安っぽくなりそうで、ギリギリの線で品質を維持しつつ、しかもUFCはうまく経営を成功させていると思う。フィッチや岡見のリリースは、理屈で考えれば、突出して酷だという印象を持つ。しかし感覚的には、「ああ、そうなったか・・・」と了解できてしまうところも正直言ってある。社長さんのお気に召さなければ、どんなに実力のある社員でも、日の目を見ることは難しいというのが現実的な理解の落としどころと言うことになろうか。こういうことって、なにも格闘技の世界に限ったことではないのだ。誰だって多かれ少なかれ苦しんでいることだ。勝つことは必要条件ではあるが十分条件ではないと言うUFCの世界観は、1ファンの目から見ていても、ある程度了解できることだった。そして岡見がそのことに、積極的に取り組んでいるようには、見えにくかったことも確かだ。

いうまでもなく、岡見のUFC戦績は全く文句の付け所がないほど素晴らしかった。ほとんどの日本人選手が思ったような成績を上げられない中、当たり前のように勝ち進む岡見は異次元の存在だった。米MMAメディアを通じて、いろんなガイジン選手の記事を読んでいても、オカミ戦が何かの転機になったとか、オカミ戦の頃はこんな事を考えていたなど、選手が過去を振り返ったときにオカミの名前が出てくることはずいぶん多い。こういうことを、UFCに根を張るというのだろうなと思って見ていた。

連敗してのリリースなら、他団体で連勝すればすぐにでもUFCに復帰できそうだが、必ずしもそんな単純な話でもなさそうな以上、いったいどうすれば岡見がUFCに復帰できるのか、気が遠くなるような気もする。もっとも、UFCミドル級のトップ戦線が急に人手不足になるとか、アジア大会連発でアジア人の大物ファイターが足りなくなるなど、状況が岡見を呼び寄せることもあり得るだろう。途上でフィッチのようにつまらない黒星を喫したりせず、万全で腕を伏していてほしい。あと、戦いをいったん終えたこのタイミングで、技術論や戦術論ではなく、岡見さん個人がどういう人なのか、なんでソネンとそんなに仲がいいのか、ソネンのお母さんに撃たれそうになったのはどういう顛末だったのか、UFCって実際のところどうなの?など、グダグダでもいいからノンビリした長いインタビュー記事なんかも読んでみたい。

【すべて個人の意見です】

リアルスポーツという言葉が誤解を招きやすいかと思い、一部改訂しました。
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高橋テツヤ

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