As Unreal As It Gets 【シウバ・ディアズ戦終わる】


ミーシャ・テイト def サラ・マクマン

たちあがり、まるでジョニー・ヘンドリックスのような強烈な打撃でマクマンがミーシャをいとも簡単にぶっ飛ばす。この序盤のビッグヒット一発でミーシャは眼窩底を折ってしまったのだという。そしてただちにマクマンはミーシャにむんずとのしかかり、そのままラウンド終了まで、動かざること岩のごとし。五輪レスラーの異形なまでの強さでミーシャをねじ伏せて見せた。こんな力量差のある試合、ミーシャはいったいどうするつもりなのだろうと思って見ていたら、2R中盤、窮鼠猫を噛むというのか、ミーシャが急にガキ大将のように理論を越えた突進を開始、そのまま試合終了まで、どういうことなのか、逆に五輪レスラーを押さえつけて削り続けたのであった。まるで「人間力」がトップアスリートの能力を吸い取ったかのような、シュールな試合だった。ジンガノといいロンダといい、女子トップランカーが垣間見せる人間力はえぐすぎる。中井りんの次の試合はどうなるのだろうな。


アンデウソン・シウバ def ニック・ディアズ

いい試合だったかと言えばそうでもない。でも印象的だったかと聞かれれば非常に印象的な試合だった。そして、誰も大きく傷つくことはなかったという意味で、試合結果にはほっとした。

とくに1R前半のアンデウソン・シウバのことは正視することすら難しかった。シウバを見ていて僕は、洗脳騒動から復帰してきた中島知子のことを思い出していた。テレビカメラの前できちんと話をしているはずの中島は、現実とほんの少し回転数があっていないかのように、見えない薄い膜一枚向こうにいるかのようにみえて、僕にはとても怖かったのだ。それと同じように、現に生中継で戦っているアンデウソン・シウバにはどこか現実味がなくて怖かった。どういうわけかウエルター級のニックよりも身体はウンと小さく見え、禿げ頭に光る汗はとても冷たそうに見え、ローキックを出すたび・食らうたびに、見ているこちらのはらわたまで、衝撃が響いてくるようだった。ニックが悪態をついている姿でさえ、まるでアンデウソンを現実世界に引き戻そうとしている親友の激励のようにみえた。

2R、3Rのアンデウソンは、やや現実に馴染んで、自分のリズムを見つけ始めているように見えた。それでもこのアンデウソン・シウバが、あのアンデウソン・シウバと同じなのかについては、最後まで確信を持つことができなかった。

ニックも様子がおかしかった。アンデウソンはもともと、カウンターを狙って待つタイプの選手だが、ニックも今回はカウンターを狙っているように見えた。だからこそ、試合は両者のお見合いに終始してしまい、ほとんど何も起きなかったように見えた。こんな千両役者が揃っても、こんな試合になり得ることがあるのか、と思った。そういえば昔、IWGP決勝の「猪木対アンドレ」が、何も起きない凡戦に終わった事をめぐって、I編集長が小説まで書いていたことを思い起こした。この試合にも、小説が書けそうなくらい、いろんな文脈があったのだろう。だから何も起きなくても、固唾をのんで見守れるのだ。



試合後記者会見でニックは、腕を負傷していて、ここ2週間、打撃練習をまったく行っていなかったことを明らかにした。だから、腕一本でカウンターを狙うしかなかったのだ。アイーンのような構えもそのせいだったらしい。公開練習もすっぽかしたのではなく、ラスベガスには来ていたが、動けないからあえて欠席したのだ。

最初から最後まで、いったい自分は何を見ているのだろうと、夢が覚めるかのようにハッとして、でもそれは夢ではないので何からも醒めない、そんなおかしな感覚がダラダラと続く試合だった。ほとんどフルマークの判定でシウバが勝ったというのもまるでピンとこなかった。えっ、何をどう見ればフルマークになるのだろう・・・そう思いつつもふと、「1Rは悪態でニックが取った」などと非現実的な思考をしている自分に気がついたりする。


試合後記者会見でのダナ・ホワイト 

予想していたのとはずいぶん違う試合だった。もっと打撃戦になると思った。ケガからの復帰戦となったアンデウソンにとっては、気持ち的にキツイ試合だっただろう。私はもう試合を見ていられなくてね、バックステージに戻ってこっそりみていたよ。このままでは心臓麻痺を起こすかと思ってね。

(両選手の今後はどうなるのでしょう。ニックは3連敗です)ニックについては、私がどう思うかではなく、本人がどうしたいかだろう。まったくわからん。ニックは今日、ずいぶんカネを稼いだぞ。次は3年ほど、試合をしないのかもしれない。

(アンデウソンは本調子だと思いましたか)39歳にしては抜群に好調だろう。キミらも39歳になってみればわかる。考えられないくらい素晴らしい。ただ、1年前のアンデウソンと比べるとどうだろう。今回フルラウンド戦って、心理的なハードルも克服しただろうから、次回には本領を発揮してくれるんじゃないか。今日のアンデウソンは、まだ試運転なんだ。それでも昔のアンデウソンの片鱗は見せていたじゃないか。




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高橋テツヤ

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