プロレスにおける、本物に見せようという意図について



ケニー・オメガ、Vice Sportsのロングインタビューより。オメガは、子どもの頃にホッケーでゴールキーパーをしていた時にヒザを故障した経験が、いまプロレスでの足を痛めたセールをする際の役に立っているという逸話を語ったあと、次のような毒を吐いている。

全く白紙の状態でプロレスラーになる人が沢山いる。とくに何の経験もなく、ただ丈夫な身体の遺伝子を持っているだけのような人たちだ。彼らは、本物のアスリートなら経験をしているはずの痛みや苦しみを感じたことがない。だから、足を痛めたというセールをすることができない。同じようにロクなスポーツ経験もないようなオールドガイから、プロレス流のやり方を習ったとおりにやっているだけなんだ。そんなセールをする人を見ていると、誇りを持って仕事をしていると言うよりは、なんだかプロレスファンがそのままプロレスラーになったかのように見えることがある。こんなものを見ているかもしれない本物のアスリートを侮辱するような真似は僕はしたくない。



またオメガは、WWEの育成部門をクビになった後、コストコで正社員として働きながら柔術の練習を開始、真剣にMMA転向を考えていた時期もあったと語っている

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2月20日配信のレスリングオブザーバーラジオ、リスナーからの質問に答えるデイブ・メルツァーとブライアン・アルバレスの会話から。

BA リスナーからの投稿です。「1984年にビンスがプロレス業界を変貌させるまで、ファンはプロレスをリアルファイトだと思って見ていたのですか」。19世紀の新聞にはすでに、怪しげなレスリングの試合の記事が載っていますよね。

DM 一般の人は以前からプロレスはフェイクだと知っていたよ。ただ、会場に見に来るような人は、本物だと思いたがっていたということは間違いなくある。それがファン心理というものだろう。会場まで行けば、自らすすんで疑惑については判断停止をしてしまう(suspension of disbelief)。だからレスラーやプロモーターは、ファンをうまく騙しているつもりだった。あのアホどもは何でも信じやがるとまで思っていた。そうはいっても、会場のファンもどこまで本気で信じていたのだろうか。私が子どもの頃会場に行くと、回りの大人たちはほとんどみんな、これは本気ではないという前提で話をしていたものだけれどね。

BA たしかに当時は、業界はファンのことをアホだとかマークだとかいってバカにしていた。しかし当時の試合を実際に見てみると、全てのことがロジカルだし、意味があるように作られている。バカにしているわりには、今よりもずっとファンの知性を信用しているかのように見えます。

DM 当時のプロモーターたちは、金を儲ける唯一の方法は、プロレスをリアルファイトだとファンに思い込ませることだと思っていたんだ。フェイクだとばれたらあっという間に倒産してしまう。だから意味のあるものを注意深く作っていたんだ。ところが今となっては、どんなナンセンスをぶち込んでも倒産なんてしないことが分かってしまったわけだ。

BA ということは、ある意味で今のプロモーションの方がファンのことを馬鹿にしている、ということになりませんか

DM 本物に見せよう、という意図に関して言えば、今はかつてほど客にリスペクトを払っていないことは確かだね。だからといって、今のプロモーションがファンをバカにしているとは思わない。ただし昔の方が、バレたらえらいことになるという恐怖感があった分、ロジカルな商品を提供していたということだ。ストーリーラインやキャラクターは昔の方が良かった。今の方がいいと思うのは、試合の質の一貫性だ。昔は本当にひどい選手もいたんだよ。今ではとても生き残っていけないようなひどい選手がね。ジョージ・スコットやロイ・シャイアー、サム・マチョニックといった連中は、全てのブッキングを微に入り細にわたって腑に落ちるようにに組み立てていたし、いつも長期的な計画を持っていたものだ。逆に言えば、そういう緻密さがないプロモータ連中は、長続きしなかったね。





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高橋テツヤ

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