【社説】ジナ・カラーノ現象を他山の石とせよ


この週末はアメリカのMMAシーンも凪のような状態でしたが、そんな中でもいくつか、小規模大会が開催されていました。本来ならアフリクション大会があるはずだったラスベガスのトーマス&マックセンターでは、ランディ・クートゥアの奥さん、キム・クートゥアの会社がプロモートし、エクストリーム・クートゥアの選手達が出場した Night of Combat という大会が行われ、メインイベントではベテランのヘクター・ラミレスがキックボクシング王者リック・ルーファスをグラウンド地獄に引き込んで判定勝ち。元IFL王者ジェイ・ヒエロン、戦極ファイター、マイク・パイルらも完勝したそうです。

バージニア州フェアファクスでは、ワシントンDC地盤のUWC (Ultimate Warrior Challenge) と言うプロモーションが実券だけで5600人を集めて大会を開催。出場選手はローカルファイター中心で、試合結果を見てもまるでピンと来ませんが、このプロモーションにはかつてはランページやアルロフスキー、ユライア・フェイバーなども出場したことがあるそうです。

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米MMAシーンでは、Zuffa以外のプロモーションは相変わらず軒並み、経営的に苦況に陥っている。どこかのサイトで読んだが、エリートXCは前回のCBS放送大会について、ついに運営資金をまかなえず、ずべての収入と費用をCBSが負担したそうだ。つまり、実質CBSが主催したことになる。ダナ・ホワイトはかつて、エリートのCBS放送決定が報じられた際、「エリートはCBSに買われた」と意味不明の発言していたが、恐るべきことにほぼその通りになっているわけだ。アフリクションは、自ら発表したゴールデン・ボーイとの共同開催を上手く形に出来ない。そしてダナ・ホワイトはかねて、アフリクション1月倒産説を唱えている。

部外者として眺めていると、エリートXCの明らかな問題点は「固定費が高すぎること」であり、アフリクションの問題点は「ファイトマネー(変動費)が高すぎること」にある。両社とも色んな生き残り策を模索しているが、結局、この問題点を解決しない策は意味がないか、むしろ状況を悪化させるものと考えられる。

エリートの場合、かつて株価が高かったときに、そのキャッシュでたくさんのプロモーションを買収してしまったので、固定費の高さはもう、やってしまった、という感じで手の施しようがない。負債額は多少の経営努力でどうにかなるレベルではなく、株価が下がった時点でシナリオは破綻している。で、どうすべきかというと、いったんはごめんなさいで倒産して再建を目指すか、株価が再浮上することを祈るということになる。エリートが倒産すると、買収したケージ・レージやアイコン、スピリットMCも倒産することになるのか。難民選手が頻発しそうで大変だが、それぞれ再建を目指すしかない。ちょうど、ボードッグ休止でもパンクラスはサバイバルしたように。

アフリクションの場合、選手の顔ぶれを見ただけで、ファイトマネーが高くつくことは一目瞭然だが、それをまかなえるほどPPVは売れなかった。アメリカのベンチャー企業などが、高給取りを雇いたいがお金がない、と言う場合にどうするかというと、一般的には、バリアブル・ペイにして、売り上げの一定率を事後的にボーナスで払うとか(きつい成果主義ですね)、ストックオプションを支給することになる(このごろはもう、流行っていないかもしれませんがね)。PPVがガツンと売れれば、選手にきわめて厚く配分するようにする。でもPPVが売れなければ選手には泣いてもらう。保証給は低く抑える。そしてお勘定は大会ごとにきれいに精算する。そんなやり方でなければ、あとはどこかの金持ちがたくさんのお金をくれることを祈るしかない。思えば、NWAの昔のチャンピオンなんて、そんな感じで各テリトリーを回って、ゲート収入の半分くらいを持って行くと同時に、ローカルの若手選手を食わせていたんではないのだろうか

考えてみれば、オーティスとかアルロフスキー、シルビアといったビッグネームが、弱小プロモーターから巨額の固定給をもらおうという時点で、どこかおかしいのではないかとも思える。UFCでは十分評価されていないと感じたり、UFCを離れて自由に戦いたいというなら、本来であればもはや、自分で数字を引っ張ってくるしかないだろう。大スターは自分で自分をプロモートする。プロモーターはそのための場と化す。そして前座の若い選手に固定給を払ってやる。色々難しい点もすぐに思い当たるけれども、原則的にこういうやり方でもとらないと、どう逆立ちしてもアフリクションのやり方では勘定が合うわけがない。

アフリクションとゴールデンボーイの連係は、それでアフリクションのファイトマネー問題に片が付くとは思えない以上、ピンと来ない。エリートとアフリクションの接近現象も見られるが、固定費が高い会社と変動費が高い会社が一つになっても、ふつうは悪夢だとしか思えない。


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エリートXC唯一の救いは、女子戦を地上波で流してみたところ、これが数字の稼ぎ頭になってしまったという点で、世界中でこういう成功例はまだあまりないと思うけれど、日本でもスポンサーやテレビ局に対する一つの資料にはなるまいか。もちろん、ジナ・カラーノという恵まれたタレントありきの話ではある。ごく親しみやすいタイプの美人で、ルックスがいい。そして試合も出来る。さらに、つい先日までは米NBCの「アメリカン・グラジエーター」という番組でクラッシュという役柄を演じて好評で、あらかじめ知名度を上げていた。このファイトマネー2万5千ドルの女の子が出てくるだけで視聴者が100万人増え、その後にファイトマネー50万ドルのアンドレイ・アルロフスキーが出てくると視聴者が10万人減ったという。ジナのライバルはクリス・サイボーグという選手で、この人はとくに美人でもなければ知名度も無かったけれども、とにかく野蛮どう猛で、別に何も悪いことはしていないけれども、ジナとは好対照のヒール的な位置に気持ちよく納まっている。

アメリカでうまくいくのなら、格闘技や女子の闘いにずっと寛容だと思われる日本でも、日本版ジナ・カラーノさえいれば、結構ヒット企画が出来るのではないだろうか。凶悪不細工選手とのマーキーマッチが一つ出来て、仮にたとえばDREAM中継で5分だけ流れたとしても、そんなことが女子格業界を底上げするのかどうかは分からないけれども、日本には伝統的に、女子がかっこいい女子を応援するという、男子にとっては摩訶不思議なマーケットがあるわけだ。クラッシュギャルズ人気はその典型だし、近年でもソフトボールの上野の人気などを見ていると、きっとああいうモノに飛びつくニーズは常にあるんだろう。新しいファン層の開拓にはなるのかもしれない。

そういえば、いま30代くらいの女性で、クラッシュに憧れて実は女子プロレスラーになりたかったとか、密かにオーディションに申し込んでいたという人は結構身の回りにいたりする。会社のイヤなヤツにトップロープからのミサイルキックをかましてやりたいとか、夜道で襲われたらハイキックで対応するつもりだなどと述べる人もいる。刺激を受けると、女子は結構、果敢に動く。


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