ステロイド問題がファンに突きつけるもの


UFC95はロンドンバージョンのこじんまりした大会。力を抜いてそれなりに見れば、ほくほくと楽しめた。さすがと唸るばかりなのはデミアン・マイア。今回はストンと三角締めの形で座り込んでおいて、青木が宇野を誘い込んだように、まるで相手がフィニッシュの体勢に自分から入っていくかのように極めていた。これでUFC5連続一本勝ちだそうだが、うち4回、サブミッション・オブ・ザ・ナイトを取っているので結構なお金持ちでもある。ワセリンも禁止となり、今後ますます実力発揮となろう。アンデウソンのコンテンダーとしても最も幻想が高まった。事実上のWECミドル級王者ソネンのUFCデビューでもあったが(事実上の、というのは、ホントのチャンプはチャンプのまま首になったパウロ・フィリヨだから)、もうちょっと格好のつく対戦相手とやらせてやりたかった気もする。

コスチェックが新鋭に敗れるという、どきっとするアップセットもあった。マーコートもすごく元気そうだったし、メインのディエゴ・サンチェスとジョー・スティーブンソンもあきれるくらい元気で楽しげなファイトだった。リーチが長い分、ディエゴの打撃が当たっていたようには見えたが、だからといってスティーブンソンが弱そうにも見えなかった。1Rは互角、2Rはディエゴ、3Rはスティーブンソンと見たので、判定であれだけ差がつくとは意外だった。ただスティーブンソンはこれで三連敗。階級変更の可能性が報じられ始めているが、いったんUFCを離れてリフレッシュするようなら、戦極で北岡と夢の顔合わせを願いたい。それにしても北岡はスティーブンソンに似ていると指摘されると何故いやがるのだろう。

MMA Weekly によると三賞は次の通りで、ボーナスは4万ドル。

UFC 95 Fight of the Night
– Diego Sanchez and Joe Stevenson
UFC 95 Knockout of the Night
– Paulo Thiago
UFC 95 Submission of the Night
– Demian Maia

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Gabriel Shapiro: Steroids and Performance-Enhancement in MMA (Fight Opinion)

Kamiproでも扱っていたステロイド問題について、Gabriel Shapiro という作家がFight Opinion に興味深い寄稿をしていたので抄訳する。個人的にもこの意見には共感・賛成できる。

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スポーツ観戦をする者の潜在意識に漂う「スポーツの理想」に、スポーツはフェアプレイでなければならない、ということがある。MMAでは、金網は生死のメタファだし、試合自体も自分たちの生き様の象徴となりうることから、選手には公明正大を期待する。そして、もしあんな風に強いハートを持てば、自分自身の戦いも同じように切り抜けられるのではないかと投射する。

スポーツの理想とは、挑戦することだ。ロッキー4といった映画はスポーツ・ストーリーの典型で、そこでは負け犬のヒーローが、体が大きく才能に恵まれた敵と対面し、それでも激しい練習と、「ハート」とよばれる謎の要因で切り抜ける。

現在のMMA人気は、かなりさかのぼることになるが、やはりその源流は第一回UFCに求められる。痩せっぽちのホイス・グレイシーが、無謀な無差別級のトーナメントを、チョークやアームバーで勝ち抜いた。初期UFCでは、ホイスはまるでロッキーとルーディと聖書のダビデをひとつにしたようなもので、その後このスポーツも体重差や身体能力を重視するように進化してきてはいるが、それでも対戦相手を技術と意志で圧倒するという概念自体はいまでもMMAの基本的な理想型となっている。

ホイス・グレイシーから昨年の6月、規格外のレベルのナンドロロンが検出されたことは、MMAにおけるスポーツの理想と、このスポーツの冷酷な現実との間のベールをはぎ取るのにこれ以上ないうってつけの出来事であった。マット・ヒューズ戦を経てホイスは、技術とハートだけではやっていけないことを学んだしまったMMA選手の一人となったのだ。相次いだフィル・バローニ、ショーン・シャーク、エルメス・フランカの陽性反応、プロレスでのクリス・ベノワ・スキャンダルとも結びついて、MMAにおけるステロイド問題は沸点に達した。

しかし、ここ数ヶ月のMMAやプロレスに関するどの評論やフォーラムでの議論やメディア報道を見ても、的を得た議論を見かけることはなかった。たとえば、ステロイドは確かにMMAやプロレスに衝撃波を送り出したけれども、今年のツール・ド・フランスなど、増強剤の問題で完全崩壊しており、そこでつかわれていたのはナンドロロン、ドロスタノロン、ボルデノン、スタノゾロールといったありふれた同化剤どころの騒ぎではなかったのであるが、そのことに触れている者は一人もいない。世の中の商業スポーツとの結びつけができない原因の一つには、MMAがすでに、純粋な競技の状態に戻り得ないエンターテインメントになっているという事実を受け入れることが出来ていないことがある。われわれは、全員がすでにある意味「増強」されている。また、遺伝子治療やチタン製の骨、代替関節、細胞の入れ替えといったスポーツ医学が発達し、「ナチュラル」と「増強」との違いがどんどん曖昧になってきている。実際、現在の選手が、増強前の自然な状態に戻ること言うことは、ある程度までは出来るかもしれないが、ハリウッド映画がCGIを捨ててアニメに戻るよりもうんと難しい。

われわれは選手に、超人性や不屈の意志を見たがる。5ラウンドのタイトルマッチの場合、どのラウンドもまるで1ラウンドのように激しい動きを欲しがる。ケビン・ランデルマンにはヒョードルをいとも簡単に、かつドラマティックにスープレクスで投げ捨てて欲しいと思ってしまう。マイク・タイソン的な、あるいはヴァンダレイ・シウバ的な選手がフル充電した狂犬のように爆発し、痛みも怪我も感じないままに、対戦相手を残酷に葬って欲しいと思ってしまう。このようなパフォーマンスは人間業ではない。超人だ。そろそろ、我々の期待値について再考すべき時だ。選手には、心を揺さぶるロールモデルになって欲しいのか。それとも、ただ練習が好きで、仕事として試合をしている普通の人だと思いたいか。もっと何か他のことを期待するか。シャークやフランカ、バリー・ボンズを悪者扱いするのは簡単だが、我々が彼らに課している要求について内省することはかなり難しい。

では、増強剤を合法化すればいいだろうか。それは私にはわからない。ただ言えることは、この質問はほとんど検討されたことがないし、もっと検討されるべきだと言うことだ。この問題に正直に取り組めば、おのずとわれわれは鏡を突きつけられることになる。ずんぐりした体格の選手でも良いか。KOパワーは足りなくても良いか。スタミナが切れても良いか。違法な増強剤を根絶すればそういう結果になるのである。われわれが欲しいのは、BJペン的なものか、それともショーン・シャーク的なものか。たぶん両方欲しいのだ。正直なところ、BJペンはショーン・シャークのおかげで、よりいっそうエキサイティングなものとなる。細胞レベル、遺伝子レベルのダビデ vs ゴリアテなのである。それがこのスポーツの現実だし、正面から見据えるべきことなのである。
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先日の K-1 Max 後に谷川氏は、「魔裟斗選手は近々方向性を発表すると思いますけど、早ければ福岡に出てもらいたいと思いますけど、トーナメントに出るかどうかはもう少し時間をください。」とコメントしていた

たしかに魔裟斗の去年の活躍はある種の高みに達していたし、今後は新機軸が必要であるように思う。個人的にはストライクフォースに出陣してはどうかと思う。キックルールでCBSで全米放送してもらうのだ。その映像だけはもらってきてTBSで流せばいい。彼はかつて、ラスベガスで戦い、PPVで儲けたいといったことを言っていた。その夢への第一歩になるだろう。国内で仕事を成し遂げたスターに不足のない大舞台ではあると思う。なおCBSでは、キックルールだと明確にアナウンスしておかないと、後で大変なことになる。

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