破綻無き完全主義者の破綻【三沢追悼】

何の意味があるのかわからないが、個人的な三沢の記憶を少しひもといておきたい。

三沢は、例えば猪木的な過剰なパフォーマーでもなかったし、長州的に事情や感情をリング上で表に出す人でもなかった。言ってみれば、ホントの所は何を考えているのか、ほとんどわからないタイプの人だった。複数の米ウエブサイトで「三沢はアメリカで言えばザ・ロックやスティーブ・オースティンみたいな人。ロックがビンスを兼任しているようなもの」と紹介されていたが、正確に言うと違うと思う。ロックたちは等身大以上のスターを演じたが、三沢は等身大のスターだった。あくまでリング上のパフォーマンスですべてを語る合理主義的な職人だったのではないかと思う。

90年代のリング上でのパフォーマンス、四天王の切磋琢磨はすさまじかった。エネルギーがすべて内部に向かい、狂気と思えるほど深まっていた。ベストバウトをあげろと言われても困る。とにかく、区別が付けがたく壮絶な試合群というのが正直な記憶である。彼らの当時の試合のライバルは、あくまで前回の自分たちの試合であり、それを超えるかどうかが焦点になっていた。いつも欲張りなファンも、「もうよしなよ・・・」と、ちょっと引くほどでは無かったかと思う。

そして、破綻しているように見える試合は皆無だった。馬場には「不思議な負け」がいくつかあるが、三沢にはないのではないかと思う。三沢が何かに不満をぶちまけたという話も聞いたことがない。考えてみれば、そんなレスラーは本当に珍しい。ずっとリーダー役を任され続けてきたから、ジェラシーを感じるような暇がなかったのかもしれない。

だからこそ、三沢の個人的感情と思われるものがポロッと露出する瞬間が好きだった。たとえばインタビューで(インタビューもほとんどおもしろみは無かったのだけれども)、後輩の川田を評して、「無口なのに一言多い」などと端的に表現。これだけで三沢が川田をどう思っているのかよくわかったし、普段怒らない人が静かに怒ったという、二倍増しのリアルさがあって、余程のことなのだろうなと思わせた。ゼロワン立ち上げ戦、メインイベント後の大乱闘で本当にうざそうに小川にエルボーを放ってしまい、「おまえらの思うようにはしねえよ、絶対!」と、湧き上がる創造的カオスに一人で冷や水をぶっかけるシーンもガチガチで大好きである(もちろん、これがこのブログの題名の由来である)。冷たい三沢に対して橋本はますます熱を上げ、ラブレターまで書いていたと思う。僕は実は、「ノアだけはガチ」という言葉の意味がよくわかっていないのだが、こういうことを言っているなら気分はよくわかる。ただこんな事例もとても少なくて、おそらく三沢自身は、こういうちょっとした裂け目を見られることをとても嫌っていたのだと思う。ザ・リーブのCMも、奇妙ではあるが完全なお芝居であって、裂け目は見えていない。「おもしろCM」の作りとしてはぶっちゃけ、古くさい。

他方でたとえば、高山がおそるおそる、PRIDEに出てみたいのですがと聞きに行ったら、「いいよ、どうすればいいの」と軽快に即答したというエピソードもとても印象的だ。「フランス書房」だったかで、何の前触れもなくAVの蘊蓄をたれていたのも衝撃的だった。きっと三沢を知る人にすれば、ごく当たり前の三沢らしさなのだろうけれども、リング上の姿だけを見ている者にとっては突飛に見える面もあった。馬場を継ぐかのような、プロレス職人としての堅い自分を持っていた反面、リングを降りれば、当然のことながら、馬場とは違った豪快で出鱈目な一面をかいま見せていた。

いつだったか、目の負傷を隠して強硬出場した佐々木健介にエルボーを打っていた三沢は、おもむろに健介の目の異変に気がついたのであろう、フッと攻撃を止めパートナーに交代したりした。小橋建太の病状も素直にアナウンスし、手厚い休暇と治療を与えたし、秋山についても無理をさせてこなかった。選手の健康面に気を遣っている様子は十分に見て取れた。他方で、あれはたしかNOAH設立一周年の日テレの特番だったと思うけど、一番嬉しかったことは何かと聞かれた三沢は、(普通のファンなら秋山の躍進かな、と思うところ)丸藤が試合中に怪我をしたのに試合を成立させたこと、と言っていた。そんなことを言うのか、と意外に思ったので良く覚えてる。一旦スタートしたら、ショーはストップできないという強い信念も併せ持っていたのだと思う。


結局三沢は最後まで、ファンにも、そしておそらく対戦相手の選手にまでも、自分の裂け目を見せられず、ショーをストップすることもできなかった。そして最後にあり得ないくらい大きく裂けてしまった。どれほど限界だったのだろうと想像すると苦しい。もっと出鱈目で豪快で、ときにはおかしな試合もやり、たまには個人的感情をぶちまけ、厳格な体調管理を自分にも適用してガス抜きをするような人だったら、こうはならなかったのではないかとの悔いが残る。もうちょっと普段から、ファンに甘えて欲しかった。それでもファンは、三沢をより愛したと思うのだが、違うだろうか。それは、本性を悟らせない古風な俳優さんのような三沢流ではないのかもしれないが、こうなってしまっては、三沢流もあり、とは言えなくなってしまうではないか。ごく最近、リング上で天狗の面を付けて浣腸攻撃を繰り出したのは何かのサインだったのだろうかと、今になればそうも思うが、これもちょっといきなりで突飛すぎた。甘えるのが下手だっただけなのかもしれないと思うと悲しい。

NOAHが今後も古風な俳優さん路線を貫くのかどうかは気になるところだ。昨今あまりはやらない路線だし、損な役回りだ。でも、そういう俳優さんがいてこそ成り立つ作品もたくさんあると思う。

●ほかにも何点か触れたかったことはあるが、下記に素晴らしく良くまとまっているので丸投げ。

三沢光晴さんの死を、今後のプロレス界には絶対に生かして欲しい件。(フモフモコラム)

「お笑い芸人のリアクション芸」説にはかなり同感だ。いくら熱湯風呂が安全な温度に保たれていても、ひどい二日酔いで入ったのでは事故は起こるのである。リングドクターの不在を批判する声があるようだけれども、それは求めすぎだと思う。ただ、AEDくらいは、選手の皆さんは触れておく方がいいと思う。公共の場所に備えられるようになってるし、素人でも音声ガイダンスに従えば操作できるものだ。たとえば駅でおばあちゃんが倒れたときにも役立つ。消防署で習えるし、スポーツ選手は結構習っているものかと思っていた。

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プロレスリング・ノア三沢光晴さんを偲び追悼特番・特集を下記の通り放送させていただきたく存じます。(日本テレビ公式)

23日にもノア役員会…百田副社長が示唆 (デイリー)

7・4 三沢さんお別れ会…ノア旗揚げ聖地・ディファ有明で (スポーツ報知)

武藤全日社長、レスラー体調管理へタッグ強化 (サンケイスポーツ)

三沢さん、年内引退決意していた (デイリースポーツ)

4日前に相談…三沢さん、年内引退決めていた (スポニチアネックス)

過酷極める中小企業社長業…三沢光晴さん急死 (夕刊フジ)

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戦極育成選手 真騎士が王座挑戦、パンクラス二大タイトル戦決定(Kamipro)

メーンイベントで弘中vs.永田弟決定=6.27CAGE FORCE(スポナビ)

暴力大魔王 加藤友弥 DEEPに初見参だっ!!!!!!!!!!!!(The wild side of the DEEP)

UFC® Launches UFCJAPAN.JP(UFC公式)
Sports Marketing Japan 社が運営していると発表されている。モバイルサイトもオープン。

RSS を吐いて欲しいなあ。


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JUGEMテーマ:格闘技全般  三沢光晴 享年46歳ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。

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