煽り発言を考察する翻訳記事集


金網の中で、下着を着た男たちが重なり合い、汗まみれになり、うめき声を上げながら殴り合う。こんなものはなんにせよ、メインストリームの受容を得るにも限界がある。ブロック・レスナーがビールとセックスを愛するかどうかは関係ない。

ブロックはある種の人々を怒らせたかもしれない。NFLを見るような平均的なアメリカ人男性のことはそんなに怒らせたわけではないだろう。ある種の人々が怒っているのは、MMAそのものに対してなのかもしれない。

レスナーは、多くの人が懐かしがるような平均人だ。でかくて強いという彼の戦い方は、古風な男が敵を倒すときの典型的なやり方だ。私はBJJも好きだし美しいテクニックも好きだが、ブルーカラーな自動車業の労働組合といったタイプのひとたちにとっては、強くてでかくてタフ、というコンセプトが大好きなはずだ。そんな男が、ファンシーな技術を持った可愛い顔の男をたたきのめし、スポンサーに文句を言い、ベガスの金持ちの気持ちなど気にも掛けず、嫁さんと朝まで楽しむ。

そんな種類の男はアメリカのハートランドにはまだまだいる。LAとかニューヨークといった場所にはいない。ミネソタやアイオワ、オクラホマ、テキサス、ミズーリあたりにいるのだ。絶滅しつつある種類の男たちだが、まだ死に絶えたわけではない。ジーンズにワークブーツを履き、一日中足は痛み、手は皮のように分厚くて、年金になんか入っていなくて、自分のやってきたことが失われていったり、世界が変わっていくことはわかっているけれども、それについて何もせず、それでもOKで、ただ昔流のやり方がまだ好き。ブロックはそんな男たちのことを思い起こさせる。ブロック・レスナーは男のヒーローである。

Figure Four Weekly, 7月14日号


レスナーの試合後のアドリブ発言には特に驚かない・・・彼は迷惑なほどに感情的な男で、いつもまず喋ってしまって、後から考える。生まれつきのワルなどであるわけもないが、あの負けん気は危険だ。レッスルマニア19でブロックはカート・アングルにムーンサルトを決めた。試合前には、キミくらいの大男がムーンサルトをやるのはあまりに危険、けしてやらないようにと忠告されていたにもかかわらずだ。忠告は逆効果だった。レスナーはあの日、理屈に反抗しアドバイスに楯突き、もう少しで、選手生命を絶つところだった。

レスナーは野次られるのが好きだった。自分が世界と対立していると解ったときに、レスナーはゲームのレベルをアップさせた。WWEの旅のきつさと感情的なきつさに辟易していたレスナーではあるが、登録選手の中で最も悪党だったときに、最も幸せそうに見えた。

ある種の人は、悪漢であるということを真に楽しむものだ、ということを忘れてはならない。レスナーはリング上であれオクタゴン内であれ、そんなペルソナを持っている。ブロックは学校なんか嫌いだったというが、ヤツは南部出身のアホなどではない。常識人だ。かつてエリック・ビショフが書いたように、矛盾こそがほんもののキャッシュを生み出すんだ。

UFCもそんなことはわかっているだろう。偉大なプロモーターは、そんな基本的な要素は理解しているものだ。

レスナーがデビュー戦でミアに敗れたことに始まる17ヶ月のストーリーは、UFC100のメインイベントで、天罰と復讐という、二つの人間の基本的本能がおりなす、昔から何度も成功が実証されているアイデアに結実した。ストーリーのタメが長いということは、MMAであれプロレスであれ、黄金律である。

MMA純粋派はいまのところレスナーを嫌っているだろうが、次に誰か慎み深い選手がレスナーを倒すかもしれないところを見るために大金を払うだろう。ロシア人のヒョードルでさえ、レスナーと戦えば人気を独占できるだろう。ボトムラインは、次にレスナーを倒す男は鉄板のスターである。

JR's UFC 100 Thoughts...JBL Runs With The Bulls(WWEジム・ロス公式ブログ)
ジム・ロスはWWE放送コメンテーター



レスナーの試合後の発言は素晴らしかった。そう思わない人はマークだ。こういうヒートがカネになるんだ。熱心なMMAファンなら、だれかがレスナーを倒すところを見たくて仕方ないだろう。それがカネなんだ。

ダナ・ホワイトは、UFCはリアルなのであって、ブロックのようなプロレス流のフェイクはいらないと発言したらしい。オレに言わせりゃ、あべこべな話だ。ブロックが本物で、他のヤツらこそがフェイクなんだよ。試合前に散々トラッシュトークを繰り広げていたくせに、ラウンドの始めと終わりにはグローブをタッチし、試合が終わればハグし合い、試合後コメントで実はトラッシュトークは嘘だったと明かすやつらを、これまで何度目にしたことだろう。俺の意見では、ブロックは心から、前回ミアに負けたことに腹を立てていて、今回は殺してやるつもりだったんだと思う。フランクは試合前にトラッシュトークをしていたけど、そのせいでブロックは怒っていたんだ。ブロックの感情は本物だ。だから試合後にも、すっかり興奮して、アタマではなくハートでもなく、純粋な怒りから喋ってしまったのだ。ブロックのメッセージはシンプルだ。牡牛をからかえば、角のひと突きをくらうということだ。

UFC 100 Thoughts (StormWrestling - ランス・ストーム公式サイト)


試合が終われば誰しも握手をし、ナイスな人間になり、敵のことをリスペクトするとか、こんな選手と戦えて光栄ですとかなんとか、政治的に正しいことを言うヤツが多い。

クソくらえだ。

戦いは戦いだ。戦うときには、敵より先に、KOしてやるか、一本を取ってやるしかないんだ。

自分がオクタゴンに立って、反対のコーナーに鍛え抜かれたバッドアス野郎が立ってると思ってみろ。そんな金網の中に入っていく気分というのは、どんなものか。リスクに身をさらし、痛みに耐えにいく気分というのは。

その瞬間のことを想像してみろよ。で、もう一度よく考えてみればいい。「そんな立場の男に、スポーツマンシップなんか求めるべきなのか」。

ヤツは善人じゃない。紳士でも、スポーツマンでもない。ヤツは怒り狂っていて、キラーモードに突入していた。ヤツはミアともう一度戦いたがってる。ミアは試合前、「ブロックに教えてやる」とか、「ブロックはWWEのプロレスラーだ」とか言っていた。そのことばをミア自身に返してやりたがっている。

ブロックは単に最高のアルティメット・ファイターなのではない。彼はどうすればヒールになれるかを知っている。キミに嫌われる男だ。もっと重要なことは、キミが金を払う男なのだ。

Paul Heyman: Brock Lesnar The Ultimate Heel For UFC (Heyman Hutsle - ポール・ヘイマン公式ブログ)
ポール・ヘイマンはWWE時代のブロック・レスナーのマネージャ役を務めた


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(比較対照資料:格闘技通信先月号、日沖発インタビュー)

(プロモや煽りの発言について)
出来る範囲だったらやるかもしれない。でも最低限対戦相手をリスペクトする感じでやりたいと思いますね。未だ世間一般には、総合格闘技に野蛮なイメージを抱いている人もいるじゃないですか。必要以上にやったらマイナスになりかねない

(そうですよね、いまだに大麻の売買や喧嘩で逮捕されたりする選手もいますからね)

・・・どこの世界にいってもそういう荒くれ者はいる。でもその中で、格闘技は本当に誤解を受けやすいスポーツ。ルールで殴りや蹴りが認められている以上、仕方ない部分もあるかもしれないですけど、総合はアスリートが行うスポーツですからね。

でも総合にはプロレスの流れがあるじゃないですか。しかも、一部のマスコミはおもしろがって、その流れを誇張する。

だからこそ僕は時代を変えたい。英語で総合はミックスと・マーシャルアーツと呼ばれている。だったら僕らはアーティストである必要があるんですよ。

・・・・「相手をぶっ殺してやる」みたいにプロレス的な発言をしたら、スポーツ紙に大きく扱われる。でも反対に紳士的な発言がそういう風に扱われることは皆無。そこが他のスポーツと格闘技の一番違う所じゃないですかね。

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ブロックの憎まれ口が始まると、僕は自分の中で何かが泡立ち始めているのに気がついた。昔よく口にしたもの・・・何か違うもの、なにか罪深いもの。過去がよみがえろうとしていた。自分の過去が立ち上がろうとしているのだ!。ブロックへのブーイングが高まるにつれて、おかしな感覚が続いた。MMAは安全な場所のはずだった。僕が逃げ込んできた場所なんだ。ブロックは、僕が殺して捨ててきたものを生き返らせた。ただ、昔と全く同じではない。何かが違っている。映画「ペット・セメタリー」にこんな台詞があった。「時には死者の方がマシだ。」

ブロックの騒動が教えてくれたのは、プロレスファンであるという自分の過去は消えないと言うことだった。ああ、もう一度やりなおしてみるしかなさそうだ。ちきしょうめ。

You got your pro wrestling in my MMA (Ring Psychology)

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昨日報じたキモ死亡報道は間違い。BloodyElbow がデマの感染具合を追いかけているが、もともとは掲示板情報だったものを NY Daily News や Examiner が報じ、その後マイケル・ジャクソン死亡をいちはやく正しくすっぱ抜いたTMZが報じたことで広く信じられるようになった。その間、記者らが地元警察やキモの関係者に確認取材を行い、この情報はデマかもしれないとTwitter で情報を流した。なかでもケビン・アイオリ記者はキモに直接電話を掛けている。

「オレは死んでないよ。今ニュースを読んでいて、これは何かのジンクスなのか、何かの前触れなのか、いろいろ考えていた。妙なもんだ。それにしても失礼な話でビックリした。失礼なことはこれまでも結構書かれてきたが、こんなものは初めてだ。自分の名前に「死」という言葉をくっつけて検索する気分ったらないぜ」

キモはせっかくなのでこの機会に自分のサイトを見に来て欲しい、試合オファーもよろしくと語っていたそうだ(笑)。こちらにはキモ自らが事情説明の演説をし、メディアに苦言を呈している映像が。


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http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-572.html ダナ・ホワイトは、UFCはリアルなのであって、ブロックのようなプロレス流のフェイクはいらないと発言したらしい。オレに言わせりゃ、あべこべな話だ。ブロックが本物で、他のヤツらこそがフェイクなんだよ。

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