【レスナー】MMAファンがもとめるもの


戦極9の感想は追って。すごく面白かった。
もはや月刊誌レベルのペースでとなったが、UFC100でレスナーが起こした波紋についてのさらなる翻訳エッセイのまとめ。

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アスリートがスポーツマンらしくない言動を取ったとき、それを批判したことのある人は、ブロック・レスナーについても何を言っても構わない。今回のことのせいで、ファンになる人よりも去っていく人の方が多いと入っている人は完全に間違っている。かつてアリについて同じことを言った人と変わらない。そして、UFCでWWE流の言動をするなんて品格を汚されたとか言ってる人は、このスポーツがどうやって人気を得てきたか、本当の歴史を学び直すべきである。ケン・シャムロックとホイス・グレイシーのインタビューはまるでWWEだった。グレイシーほど傲慢なインタビューをする人はいないが、小男が大男を倒した実績を持って、彼は最初のレジェンドになった。2002年のシャムロックとティトの戦いは瀕死の状態だったUFCを救ったが、それは彼らが世界最高のファイターだったからであろうか?違う。それは彼らのやったことが、「最高のスポーツショー」だったからであり、プロレス流の煽りをしたからである。当時のUFCはノーテレビだったが、PPVを15万件売りさばき、UFCのオーナーはやっとこの競技の可能性に気がついたのであった。

・・・・ここしばらくで最高に楽しめる代物を、メディアやハードコアファンが非難しているのは、ひとえにレスナーがWWEプロレス出身だからである。かつてタンク・アボットは観客を罵倒し、試合を見て性的に興奮してみせた。ティト・オーティスはガイ・メッツァーを倒した後、「おまえはオレのビッチ」と書かれたTシャツをかぶせた。レスナーはそんなことはしていない。オーティスを歴史に葬り去るなら、あの2006年の記録的なビジネスはなかったのであり、あれがなければ今日の姿はまるで違っていただろうし、CBSやShowtime がMMAに乗り出すこともなかっただろう。UFCが主流派の注目を最も集めたのは、2006年のティト・オーティスとケン・シャムロックのクズのような三戦目である(訳注:この試合はSpikeで無料放送された)。メディアの世界では、PPVの数よりも視聴率が王様だ。それが彼らの理解する世界だからだ。メインストリーム・メディアがゆっくりとMMAを報じるようになったのは、この試合の18才から34才の男性での視聴率が、ワールド・シリーズを上回ったからである。世界最高の二人の選手が、ナンバーワンの座を争ったからではない。プロモーションが最高に効果的だったのだ。実際にこのクズのような試合を見た人は怒っていたが、その数ヶ月後、自然な流れで「オーティス vs リデル」が実現したときには、UFCの銀行口座は猛烈に成長したのであった。

自分の考えを変えない人はそれでも結構だ。が、ただ単に反応して流れに乗っているだけの人は、ちゃんと実世界を見た方がいい。ボクシング業界の人間が、レスナーはタイソンより酷いと言ったときには参ってしまった。レスナーは敵の耳を噛みちぎったのか?対戦相手の子供を食ってやると脅したか?彼はしたことは、最高のプロモーション、それも今年最も話題になったプロモーションだ。何が悪いのだろうか?彼がWWE出身だからなのか?出身が問題なら、彼がミネソタ大学出身であることはなぜ咎められないのだ?

レスナーの振る舞いのすぐそばで起きた2つの最悪の出来事はどうなんだろう。数日前にクイントン・ジャクソンは女性レポーターに何をした?そして、プロレスラーでもないリアルファイターが会場内で喧嘩を始めそうになったのは何なんだ?レスナーが客席で乱闘を起こしたか?ジャクソンはここ数年、清廉潔白だったのか?

結局すべては感情の問題だし、許容度の物差しの問題なのだ。GSPはみんなが勝って欲しいベビーフェイスで、彼が正しいゲームプランを実行して勝つといい気分になる。レスナーは、みんなが負けるところが見たいヒールで、彼が自分のゲームプランを実行しているところを見るのは腹が立つ。これらはあの夜渦巻いていた感情だ。

この業界を何度も救ってきた記録的なPPV販売数の歴史には、このスポーツにとって何がいいことで、何が悪いことか、よく検討すべきレッスンがたくさんある。会場の観客の反応の二重性、レスナーに不満を抱く多くの大衆。これらは、MMAと、そのファンベースについて、極めて重要なことを語っている。

Sunday Update (F4W online)

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7月11日のUFC100におけるレスナーとヘンダーソンの試合後の行為を交換したと仮定しよう。いくらヘンダーソンでもスポンサーを叩けばダナ・ホワイトは怒っただろうが、一般大衆はまあ、冗談として受け流せたことだろう。でももしレスナーがヘンダーソンのように、すでに延びている相手にもう一発の致命的なパウンドを放って、試合後に「ヤツの口を黙らせるための追加の一発だ」とうそぶいていたら、ヘンダーソンの何百倍もの反響が巻き起こり、MMAの禁止論も飛び出す事態になったに違いない。

ここに、ダブル・スタンダードがあることは否定できない。

GSPはずっと、アウブスを寝かし続けたが、観衆はテイクダウンの度に大喜びだった。GSPがグラウンドで特に何をしていないときにも、観客は歓声を送り続けた。

レスナーとミアの第2ラウンド、試合が止められる30秒前、ミアがグラウンドでパンチを食らっていた時、レフリーのハーブ・ディーンに向けて、「ヤツらを立たせろ」というチャントがわき起こった。こんなことはUFC史上はじめてだ。選手は攻撃の最中だし、フィニッシュ間近だったのである。観客は、このスポーツの大きな枠組みまで壊してしまっても構わないと思うほど、レスナーを嫌ったのである。

MMAに参戦してきたたくさんのプロレスラーの中で、レスナーとボビー・ラシュリーだけは、プロレス出身と言うことを同僚からバカにされる。レスナーのUFCでの4試合の内、試合前に「ここはWWEじゃないんだからな」的なことを言わなかったのはただ一人だった。ミアは、レスナーは戦いのコツがまるでわかっていないと語った。ヒース・ヒーリングは会社に対してフェイクなプロレスラーと試合をするなんて冗談だろとクレームを入れ、ホントに殴るんだぜとコメントした。その手のことを言わなかったのはランディ・クートゥアだけだった。そして試合後にレスナーが相手の顔に泥を塗らなかったのは、クートゥアだけなのである。これは偶然のことだろうか。

そしてミアが最後ではない。次の対戦相手と目されるシェイン・カーウィンは、すでにプロレス・カードを切って煽り始めている。

「このスポーツに脚本はないよ。ギャラも決まっていないし、結果も決まってないんだ」

Wrestling Observer July 27,2009, p9

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ここ数年でMMAの人気が急上昇するにつれて現れてきた迷惑なトレンドに、ほとんどMMAを見たことがないような人が、MMA人気を、現代社会の暗い面の反映であると論じることがある。

そんなナンセンスの最近の事例は、カナダの日刊紙 Globe & Mail に見られた。クイーンズ大学の文化歴史学の教授はMMA人気を、「路上で行えば監獄にぶち込まれるような種類の乱暴行為に、人々が参加できる現象」と説明した。

ちょっと待て。その分類に落ちるスポーツはどれくらいあると思う?自動車レース。ボクシング。レスリング。キックボクシング。柔道。空手。フットボール。路上でいきなりタックルしたら逮捕されるよな。ホッケーにも格闘の要素はある。

MMA人気の理由は単純なことだ。エキサイティングな内容、テレビでの露出、強力なプロモーション、売れるパーソナリティ。この4つの要素が一つでも欠けていたら、こんな風にはならない。この4つの要素があれば、15年前でも40年までも、このスポーツは人気が出ただろう。ただし、ほとんどの文化では最初の段階ではネガティブな反応もあるので、それを乗り越えられるかどうか、という問題はあるが。そしておそらく同じことは、他の何十もの、様々な形のスポーツやエンターテインメントについても言えることだろう。

Notes: Games, Dream, and pinheads (Dave Meltzer, Yahoo! Sports)

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こちらのカナダ国立映画庁のサイトで、ブレット・ハートの「レスリング・ウィズ・シャドウズ」が公開されている。なかなか高画質。もちろん英語版なのだが、メニューを触ってみるとクローズド・キャプション(英語字幕)を表示できるので、少しは助けになる。


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