戦極旗揚げ戦レビュー


7試合の割には4時間弱のロングラン興業となり、平日なのに終わりが夜10時過ぎという形となったのはいかがなものかとは思うが、これまでの他の旗揚げ戦、たとえば猪木系のイベントや、もっとマイナーな格闘技イベントと比べれば、ピシッと締まりのある、プロフェッショナルなハコビの大会ではなかったかと思う。見ていて違和感やグダグダ感は特に感じられなかった。ただ試合を並べただけ、という印象が残ったことも事実だが、旗揚げなのだから仕方がない。過去のストーリーなどないわけだし、PRIDE時代の話を引っ張ってこようにも、映像だって使えない。煽り映像は、凄くいい、というわけでもないが、外連味無く、受け入れやすい品質であった。全体的にPRIDEのフォーマットを強く意識した作りになっていたとは思うが、ここからさらに戦極らしさを出していって欲しい。無用な期待感が無かった分、期待以上のイベントだったと思った。DREAMはそうはいかない。がっつりと楽しみにしてしまっているからである。

唯一グダグダだったのは、控え室レポートの女子アナが、最初に挨拶したっきり、最後まで二度と出てこなかったことである。控え室の風景自体は、大会途中で何度も画面に映し出されていたのだが、音声は無言であった。放送席が話しかけることもなかった。このへんもPRIDEでのアッキーナを踏襲している。アッキーナちゃんもよく出世できたよな。

日本人選手七人衆、GONKAKUインタビューでも、ちゃんと喋るのは始めてなどといいながらも、これから一緒に作っていこうという前向きさを感じさせるものであったが、PPV番組でも、その女子アナ唯一のレポート画面で、五味、吉田、藤田当たりがいいムードで談笑しているシーンは、なんだかココロ強いものであった。

試合の方は、菊田を除くその7人衆のお披露目のような形であったことも、よしとしよう。ただ、滝本はいただけない。むろん勝ち負けは時の運もあるので仕方ないが、そもそも、第三試合というのがよくない。前座で楽をさせてはいけない。もっと重い場所で、興業を背負ってやってもらうべきだろう。滝本はもう若手という年でもない。吉田ももう動けない。柱を取るつもりで前に出て欲しい。吉田戦にむけたアピールも必要だ。

あと、昨日も書いたが、この興業はドクターやレフリーの紹介もしなかったが、本来なら、日本格闘技協会が本部席できちんと睨みを効かせるべきだろう。今の時代、ドラッグテストもやって、選手がクリーンであることをアナウンスした方がいい。プロによる激しくて楽しいリング上の戦いは別として、五輪やアマチュアにつうじる競技性を追求するなら、競技運営に筋を通しておくべきだろう。それこそDREAMは、そんなことはしないだろうから、差別化にもなる。

ピーター・グラハム。MMA初参戦でご苦労様だし、アングルではがんばってくれたけど、大晦日に藤田が「逃げて」以来、丸2ヶ月も準備期間があったのに、パンチやキックのトライすら一度もなかったというのはいただけない。

三崎は試合後、「生きる」とはどういうことかを演説。このひとは、もうこれは、口を開けばどうしてもこういう話になってしまうんだろうな。武田鉄矢だと思うしかない。いちいちうざがっていても仕方ない。芸風を楽しむことにしよう。三崎説法について解説の郷野「いつも興奮して喋りすぎて、余計なことを喋らなければいいのにと思うことが多いが、今日はノープランだという割には、話がよくまとまっていた」と絶賛。ただし試合そのものについては、「勝っただけ。三崎にいいところナシ。ただ、大晦日から精神的にも疲れていて、雑音を嫌って山ごもりなどもしていて、休養も練習は十分ではなかったので、今日のところは勝っただけで良しということも出来る」と。

足首をあらゆる形で締め上げられ、息も絶え絶えにセコンドの肩を借りて退場する吉田秀彦の姿をみていて連想したのは、数日前に胸をどす黒く腫らして、セコンドの肩を借りて退場するRGのことであった。RGも吉田も、勝つ見込みのない試合に出て行き、予想以上に耐えることで見せてくれた。実は吉田は前の試合、あのジェームス・トンプソンに敗退した試合でも、ロープ際の攻防でガス欠のため顔面からマットに突き刺ささるという失態を演じているのだが、それはちょうどそのころRGがやっていた芸風と同じなのであった。吉田とRG。不思議なシンコペーションである。


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Report: Paulo Filho vs. Chael Sonnen rematch postponed until June

WEC3月大会に出場予定だったパウロ・フィリオの試合が、6月大会に延期になりました。フィリオの希望によるとされています。

Tatameによるとフィリオは次のように語っています。「良くない時期があって、うつ状態だった。だいぶ良くなってきているんだが、アメリカ人が今すぐ戦えと言うんだ。勝ち負けを恐れているわけではないが、トレーニングをする気が起きない。練習が不十分だ。だから契約書に従い、試合を延期してもらうことにした」

当ブログではミルコも「うつ」ではないかと仮説を立てました(というか、記者会見で本人がいってましたからね)が、そこに光を当てる記事などは見たことがありません。世間の一般的な反応を考えれば、マスコミ等で表立って報道できることではないのかもしれません。もちろん、「気持ちが落ち込んでいた」といった発言を捉えて、イコール、医学的にうつ病であると決めつけることはできません。ただ、人が(ことに格闘家のような職業の人が一般のファンに向かって)そのような弱音を吐くというのは、背景に余程のことがあるのだろうと想像できます(すべきだと思います)。それは勇気がいることだと思うし、現状の自分では評価しないでほしい事情を理解して欲しいんだろうと思うんですね。ここをスルーするのはかえって失礼なのではないでしょうか。フィリオの場合は、depression という単語がはっきりと使われています。しかも、自分で認めているということは、うつだとしても回復過程にあるのだと思います。

で、うつ病で何か致命的に悪いのかというと、別に悪くありません。医者に行き、薬を飲み、しばらく休めば治ります。薬を飲みながら、立派に仕事をしている人など、社会にはいくらでもいます。怪我をしても風邪を引いても、試合は欠場するでしょう。それと本質的な違いはありません。ただ、手術をしたあとはリハビリで周りの人の助けが必要であるのと同じで、うつも回りのごく普通の理解と、必要に応じた手助けがあれば、より早く治るでしょう。偏見をもったり、タブー視する必要はない。ただ、どんな手助けが出来るかは理解すべきだと思います。

「ココロの風邪」さえ治せば、ミルコやフィリオが格闘家として超優秀であることは誰もが認めるでしょう。普通のサラリーマンよりずっと、気持ちに無理な負担がかかる職業です。ほかにもこのことで困っている選手がたくさんいても不思議はないと思います。包帯を巻いているわけではないので、いますぐに試合が出来るだろうとか、練習をさぼっているのではないかという風に見えたりするかもしれませんが、それは見る側が安易にそんな風に判断することに問題があるのだと認識すべきでしょう。


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