サンピエール氏の社交界デビュー / 藤井恵22連勝


ジョルジュ・サン・ピエールがMMAの市民権拡大に奮闘中。ニューヨークタイムスより。これって、K-1石井館長がかつて「あるべき姿」として語っていたことではないかと思う。

Carrying a Flag for Mixed Martial Arts (New York Times)

上腕二頭筋がくっきりと浮かび上がるドルチェ&ガッバーナのセーターに身を包んだ彫刻のような人影が、五番街にあるジョルジオ・アルマーニの戦艦店で行われた「ファッション・ウィークリー」のパーティ会場に、スターらしい物腰で現れた。キャデラック・エスカレードの後部座席から飛び出し、くちびるには気障で高慢なほほえみを浮かべたままレッドカーペットを闊歩し、ガードマンを通り過ぎてパパラッチのスクラムへと進んでいく。

ハニー・ブロンドの巨乳モデルが、久しい友に再会したかのように彼を抱きよせ、パリで大笑いした思い出を語り始める様子を無数のシャッターが捕らえる。しかしその男、現UFCウエルター級王者、ジョルジュ・サンピエールは、返答に詰まっている。微妙なほほえみが彫りの深い顔の上で凍り付く。「この娘はいったいだれなんだ?」

このパーティで彼女のことを知らない人は、彼だけかもしれない。彼女はスポーツ・イラストレイテッドの水着モデル、バー・ラファエリなのだ。サンピエール氏のマネージャで、ディカプリオのガールフレンドでもあるシャリー・スペンサーは、雷のように鳴り響くR&B音楽を切り裂くように、数メートルむこうから叫ぶ。「レオと彼女とでパーティをしたじゃない!」

サンピエール氏は一週間の予定で、冷笑に頭をつっこみ、刈り込まれた頭皮の傷をむき出しにしながらも、セレブの仲間入りをするためのニューヨーク・ツアーの最中だ。29歳のカナダ人、サンピエール氏がもし本気で、MMAをメインストリームに売り込む顔になりたいのであれば、Aクラスのセレブに抱き寄せられたときには、同じように熱心に抱き寄せかえさなければならない・・・


・・・もしこのフルコンタクト・スポーツが、ニッチをとりこにするだけのものから、より文化的に幅広いアピール力を持って、タイアップや企業スポンサーシップや巨額のテレビ契約を得て、次の段階に進化していこうとするなら、ちょうど90年代にNASCARがそうであったように、ハンサムで影響力の大きい代表選手が何人か現れてくると話が早い。

選手としても脂ののりきったサンピエール氏は、そんな役目を引き受けるつもりだ。「このスポーツをメインストリームに引っ張り上げる男になりたい」。サンピエール氏は、ファッション・パーティに出向く前にタイ料理レストランで語ってくれた。「ひと味違う男になりたいんだ」

昨年、スポーツ・イラストレイテッドはサンピエール氏を「ファイター・オブ・ザ・イヤー」に認定した。スパイクTVで放映中のリアリティ・ショー「ジ・アルティメット・ファイター」ではセレブコーチも努めている。

サンピエール氏は、ほかのトラッシュ・トーカーと比べれば、このスポーツをサッカー・ママたちに売り込む安全パイだ。UFCの大会後記者会見にスーツ姿で姿を見せた最初の男は、この丁寧なカナダ人であった。彼の瞳はやさしいアイスブルーで、ほほえみはボーイッシュだ。ディナーの時、彼はソフトなケベックなまりで、子供の頃学校でいじめられていたことが、マーシャルアーツを始めたきっかけだったと話してくれた。他の選手とは違い、彼には入れ墨が二つしかない。フラダリ紋章と仔牛だ。これらは新しいGSPのロゴマークと同じものだ。「GSP」は彼のイニシャルで、これからはブランドとして売り込んでいくことになる。

40代の元投資銀行コンサルタントで、ジョージア風の陽気さをほんのりかもしだしている彼のマネージャは、すでにゲータレードやアンダー・アーマーらとスポンサー契約を結んでいるこの選手に、スポーツの枠を超えたマーケティング力を見いだしている。だからこそ彼女は、ニューヨークでのメディアツアーを組んだのである。スケジュールには、MMA以外のインタビュー番組、Detail誌やGQ誌編集者との面談、Mission社のスキンケア商品とのタイアップによる新しい慈善団体の発表記者会見などが含まれている。

「まずは人間ジョルジュ・サンピエールのことを覚えてもらいたい。選手であることは二の次で良い」パーティ会場をはしごするエスカラーダの車内で彼女はそう話してくれた。

でもそんなふうになるためには、サンピエール氏は鉄の意志をもって、セレブになるための疲れを知らぬセールスマンシップを会得しなければならない。その夜の彼は、そんな目標に取り組もうとする気持ちでいっぱいには見えなかった。キャデラックの暗い車内に前屈みに座って、そんな野望についての質問を、単語だけの回答で打ち返していた。

MMAはボクシングよりでかくなるかだって?あたりまえだよ。そんなことを言いながら彼はブラックベリーをタップして、仕事の後に友達とクラブに行く約束を取り付けている。

この夜の最初のパーティは、サックス・フィフス・アベニューでのビクター&ロルフのためのものだった。街を挙げての、「ファッション・ナイトアウト」イベントの一環だ。サックスの7階でエレベーターから現れた彼の足取りは、まるで歯医者に連れて行かれる子供のように重いものだった。

「こういうのは嫌いだ」。パーティに来ている潜在スポンサーをうわべだけで接遇しながら彼は言う。「みんなが僕のところにやってくるのはいいんだ。でも、僕が彼らを追い掛ける?いやいや、それはありえないよ」

パーティが一般に公開されていたことも拍車をかけた。彼をエスコートする者はおらず、写真を撮ろうにも隣にセレブがいるわけでもない。しゃきっとしたドルチェ&ガッバーナのジーンズに、黒のレザーのバスケットボール・スニーカーを履いたサンピエール氏は、グッチのスーツの傍らで凍り付いたように立ちすくむばかりで、まるでいじめっ子版のマネキン人形のように見えた。

それでも、彼のことに気がつく人もいた。「ちょっと待てよ、もしかしてあなたは・・・」グレーのフリース・ジャケットを着たサーファー風の若い男が話しかけた。この人混みの中で、映画「ズーランダー」のキャストには見えなかった数人のうちの一人だ。「こんなところで、あなたとお会いできるなんて!」写真を撮った後、彼はそういった。もっとも、まるでエル誌のアシスタント・エディターの巨大な軍団のようにしか見えない、ほとんどの女性ばかりのこの人混みに、アナコンダ・チョークのマスターが紛れ込んでいることに気がつく者はほとんどいなかった。

サンピエール氏の魅力が女性に響かないということではない。実際にはその逆だ。スペンサーによれば、イーストビレッジのレストランで食事をしていたところ、30代の女性がサンピエール氏に近づいてきて、本当に大ファンなんですと打ち明けた。彼女は、自分の夫にもGSPのTシャツを着せ、明かりを消したときにはフランス語なまりでささやいてもらっているのだとのことだった。スペンサーがそんな話をしている間、サンピエール氏はばつが悪そうにほほえんでいた。

サンピエール氏によると、少なくとも彼の試合を見に来るのファンの3割は女性であると言うことだ。「みんなに見て欲しい。でも、同時に、すべての人に向いているわけでもない。暴力的な面があるからね」

この頃までには、このファイターのエネルギーは見るからに低下し始めていた。このあと何日も、企業スポンサーとのミーティングやら、テレビ出演やら、メッツとのバッティング練習の撮影などが続く。何とかこなしてきていた彼だったが、だんだんと、パーソナル・ブランド向上などという仕事をするくらいなら、金網の中で顔面に大振りの蹴りを食らう方がマシなんじゃないかという風に振る舞い始めている。

彼の薄れゆくやる気を奮い立たせるように、スペンサー嬢はサンピエール氏をエレベーターまでエスコートする。外に出るとスペンサー嬢は、このあともうひとつのプロモーションのお仕事があるのよと念を押す。

「どこへ行くと言うんだい」うんざりしたように彼が尋ねる。

「アルマーニよ」

「なんだってそんなところにいかないといけないんだ」彼の言い方はほとんど、駄々をこねるティーンエージャーだ。

「人と交わるためよ」彼女はきっぱりと返事をする。


> GSPはフィリピンでもプロモーションツアーを敢行、リンク先には現地のバラエティ番組で不器用におどける姿が痛々しく映し出されている。なんだかかわいそう・・・

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藤井恵 def リサ・ワード (1R1分39秒 アームバー)(9月30日 ベラトール31)

大会のセミファイナル。煽り映像も充実。MIKUに勝ったこともあるリサ・ワードは「チャンピオンになったら数年は子育てに専念しようかしら」「3年前にBodogで藤井に負けたのは、レフリーのストップが早すぎただけ。リベンジしたい」などと語っている。藤井のVではジョシュ・バーネットが登場しさんざん推薦コメントを述べていた。リング・アナウンサーのコールでは、藤井は女子P4Pであり、ブラジリアン柔術黒帯と紹介されている。サンボのエキスパートだと言うことは言っていない。

両者ともグラウンドを得意とするが、試合は打撃の応酬が続く。藤井の出入りが早く、右フックがよくヒットしていて、ワードは早々に鼻血を出している。ケージに押しつけて藤井がテイクダウン。もつれながらもさっさとアームバーに切って捨てた。TKが「ケージに押しつけるのは寝技とおなじだ」といっていたことを思い出す。感心する暇もないくらい盤石すぎる強さ。戦績は22勝0敗となった。勝利者インタビューでは、自ら英語で話すのが恒例だったが、今回はシュウ・ヒラタ氏の通訳を得て日本語で話していた。

同じく女子115パウンド級トーナメント準決勝で勝利したストライカーのゾイラ・フロストと、10月28日に決勝戦を行う。次戦まで時間がないのが案ぜられるが、今日のところはまるっきりのノーダメージのはず。汗もかいていないのではないか。なんだかトーナメントが進むにつれて、ますます遊びのない、効率的なファイトをしているような印象。ベラトールでは藤井を登場当初から超大物として持ち上げてきたが、藤井はその期待感にごく自然体で答え続けている。

このベラトール大会には吉田善行も参戦したが、どこか精彩に欠く試合ぶり、最後は目の下のカットを見かねたセコンドがストップを要請した。吉田はベラトールのトーナメント参戦権を失ってしまった。


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