WEC51レビュー【コリアン・ゾンビは活躍したのか】

UFCの事業成績についての記事が出回った。

この不景気下でもPPV売り上げは年々伸びている。2010年はおそらく900万件くらいに落ち着きそうである。




しかし、Spike で放送している無料放送の視聴率は大きく低下した。




TUFの視聴率だけを取り上げると、ヘビー級を扱ったTUF10を除けば、横ばいの状態。




他方でゲート収入は堅調に推移している。




UFCのPPV販売件数はすでにWWEを大きく上回っている。このグラフは実は、UFCの北米でのPPV販売件数と、WWEの世界中でのPPV販売件数を比べており、北米だけで見れば差はもっと大きい。WWEはすでに3~4割のPPVを海外で販売している。Barron's(かなり権威ある投資情報誌)は、WWEがUFCに食われていると断じ、WWEの株価は実態より高すぎるという分析を掲載している。




(出所)
The State of the UFC Address (MMA Payout)
Popular Vote Turns Against World Wrestling (Barron's)

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「WEC 51: Aldo vs. Gamburyan」をようやく観戦、何かと見所の多い賑やかな大会だった。アメリカでこのところ視聴率がふるわないWECであるが、この大会は前回の5割増の数字を取ったようである。フェイバー不在の大会としては異例の上出来だったそうである。


マーク・ホームニック def レナード・ガルシア(スプリット・デシジョン)
ジョージ・ループ def 「コリアン・ゾンビ」ジョン・チャンソン(2R1分30秒/TKO


4月に「ファイト・オブ・ザ・デケイド」をやってのけたガルシア・ゾンビのご両人が揃って敗退。あの大戦争もある意味では、二人の脇の甘さがかみ合った奇跡的な幸運だったということなのだろか、今回はそんな甘さをまんまと突かれたかのような完敗であった。ガルシアはスプリット・デシジョン負けとなっているが、僕にはホームニックの30-27の完勝に見えた。ガルシアのパンチの半分の軌道距離と倍の速さで、ホームニックのジャブが全部命中し続けていたのである。それでもガルシアが子供のようにぐるぐるパンチを出しながら前に出てくるので、なんだか仕留めにくかったまで、という印象だった。

人気爆発、Tシャツ馬鹿売れのチャンソン、せっかくゾンビのニックネームが有名になったと思ったら、いきなりのハイキックで完全に眠らされてしまった。ゾンビが死んだのではずいぶんと具合が悪い。DEEP時代・戦極時代の試合と比べても、今回ほど戦いっぷりには粘りがなく、こんなに動きの悪いゾンビは初めてであった。大歓声を浴びてすっかり堅くなってしまったのか、あるいはどこか怪我でもしていたのではないかと思うほどだった。


ミゲール・トレス def チャーリー・バレンシア(2R2分25秒/リアネイキドチョーク)

ブライアン・ボウルズ、ジョセフ・ベナビデスに連敗中だったトレスの半年ぶりの試合。実況によると、トレスはカナダに移り住んでGSPのジムで練習し直してきたそうだ。トレスの場合も、水垣や前田と繰り広げた決闘のような殴り合いはとてもエキサイティングだったのだけれど、ベナビデスあたりと向き合うと、戦い方がとても大味でオールドスクールな印象がしたものである。

しかし今回のトレスは、なんだかずいぶん、今風の戦いぶりに見えた。隙がなくて、コンパクトでシャープだった。こんなトレスが、おもしろいかどうかはわからないが、たしかに進化しているようには見えた。他方で、キャラが押さえ込まれてしまって、どこか、借りてきたようなファイトスタイルに見えた。

連敗でスランプに陥っている印象もあったもトレスであるが、この試合の結果、戦績は38勝3敗となった。やはりすさまじい。


Versus の映像ではこの試合の後、前座で行われた Zhang Tie Quanという選手の試合が放送された。ズッファが契約した初の中国人ファイターで、ズッファ中国進出の切り札的存在とも言われている。ニックネームは「モンゴリアン・ウルフ」。北京の Art of War などで活躍、戦績11勝0敗、バックボーンは散打だそうだ。試合は1R2分強で、意外にもグラウンドのきれいな攻防からフロントチョークで一本勝ちしていた。モンゴル系だと聞いていたので、朝青龍のような顔なのかと思っていたが、実際にはもっと東南アジア系の、浅黒い肌をしている。ルックスはさほどパッとはしない。若くもなさそうだ。対戦相手のGarzaという選手のレベルもわからない。対戦相手が土壇場で何度も変更になっていたから、Zhangをよほど勝たせたかったのかなと勘ぐりたくもなる。ただこのフィニッシュシーンは、中国向けの宣伝ビデオには、この上なく見栄えの良い映像になったことと思う。


ドナルド・セローニ def. ジェイミー・バーナー(ユナニマス・デシジョン)

前回対戦ではグラウンド状態にあるバーナーの顔面にセローニが膝蹴り、バーナーが動かなくなったため、その時点までのスコアカードで決着したという、不完全燃焼で因縁が残るものだった。今回も試合前からセラーニが「初めてオクタゴンで死者を出してやる」などと発言してプロモーターに怒られるなど、噛みつきあっていた。試合前のグローブタッチもなし、試合開始直後にはいきなり、文字通り殺し合うような打撃戦を始めたから会場は大興奮である。一発一発に殺気が宿りまくっている。タイトルマッチのような緊張感。

プロレスで、さんざんお互い口撃を交わしておきながら、実際にはのんびりとロックアップで始まる試合がよくあるが、そんなレスラーにはこの試合を見習ってほしいと思うほどだ。

試合展開の方は回を追うごとに落ち着きを見せたが、それでもセローニの鬼神のような佇まいは変わらず、バーナーの前に大きな壁となって立ちはだかり続けた。前回は顔面がボコボコに腫れていたセローニ、今回はきれいな顔のままなのに怖かった。名勝負である。

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先週の土曜日にマカオで開催が予定されていたFURY2というMMA大会が、プロモーターの横領によりキャンセルされた。ことの顛末はシュウ・ヒラタ氏のブログに詳しい。マカオ入りした選手のホテルや帰国便も全部横領されているらしく、選手は右往左往。カリーナ・ダム選手は18万円も自腹を切って帰国することになるという。MMA Rising その他の報道によると、この大会で FURY ウエルター級王座戦に臨む予定だった石川英二、同じく出場予定だった國奥麒樹真の両選手は、日本を発つ前に事態を知り、とりあえずは事なきを得た模様。





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