岡見、シャードッグ記者にも完封勝ち / 「殴る女たち」書評

Okami and the ‘Many Power of Wrestling’ (Sherdog)

オレゴン州のチーム・クエストでトレーニングする岡見勇信が滞在するホテルを、シャードッグの記者がインタビュー取材に訪れた長文記事が掲載されていた。マーコート戦に備えて2週間滞在していたそうだ。

インタビュアーがドアをノックすると、まっさきに出迎えたのは岡見のガールフレンドだったそうだ。見たこともないくらい大きな瞳の小柄な日本人女性だという。その女性がインタビューの通訳を買って出たのだが、ブロークン・イングリッシュなのでうまく話がはずまない。キャラがなかなか立ってこない岡見ではあるが、この記事は、そんなはかどらない様子を含めて、ドライながらもリスペクトを込めた記述がしてある。それでも結局、キャラは立ってきていないのだが。

インタビュアーが、「ソネン戦で敗退した後、どんな点を修正してきたのですか」と尋ねると、岡見は身振り手振りを交えて、思慮深そうな長いセンテンスの日本語で答えたが、ガールフレンドは「He can't say it one word. Many many feelings」「Many powers of wrestling」などと超訳してしまったという。

またインタビュアーが「プロレス」という一言を発すると、岡見の表情が急に子供のように輝いたのだという。岡見は「スーパー・フェイマス・ジャパニーズ・レスラー」である橋本真也が自分のヒーローであると熱弁したらしい。

インタビュアーは手を変え品を変え質問を繰り出し、おもしろい話を聞き出そうとしたが、岡見は金網の中と同じく、ディフェンスがとても堅かったと述べている。

一節だけ直訳してみる。

会話が暖まったところで、斬り込んでみることにした。

「岡見選手の試合は退屈だという人に、何か言いたいことはありますか?」

彼らは笑い出した。ガールフレンドは私の質問を聞きながら、岡見はそれに答えながら笑った。そんな非難には十分気がついているようで、気にしていないようだった。よりダイナミックでコンプリートな攻撃を志向することは、彼にとってはエンタメ志向の問題なのではなく、プライドの問題のようだった。

インタビューは通訳の手間を加えると予定の倍の時間がかかっていた。私はギアチェンジをして、岡見の個人的な面について聞いてみた。しかし、MMA以外の部分で聞くべきことはほとんど見いだせなかった。

余暇の過ごし方はイライラするほど平凡だった。好きな映画はロッキーで、好きな音楽はロッキーのサウンドトラックだということだった。私はやけになって、これまでの人生でもっとも悲しかった出来事はなんですか、と聞いてみた。

彼はしばらく黙っていた。辺りを見回し、ため息をつき、顔をしかめた。30秒ほど重たい沈黙が続いた。私は辛抱できなくなった。

そこまで悲しかったことなんて、そうはないですよねえ。

岡見には大きなトラウマはないのだろうか。彼の説明によれば、子供時代もとても幸せだったようだ。マーコート戦の戦略を伏せていたように、ここでも何かを伏せているのだろうか。そんな風にも見えなかったけれど。



こんな具合なのに、チームクエストでの練習中には、チェール・ソネンとのガチガチのスパーリングでソネンを顔から落とすという、チームメイトから見れば信じられない無遠慮ぶりを発揮したり、「岡見は何を言ってもYesと答えるよなあ」などと周囲からからかわれたり、身振り手振りでマット・リンドランドを昼食に招いてみたりと、なんだか楽しそうにやっている様子なのである。しゃべれないのに議員ファイターをランチに招いてどうするのだろうとは思うが、そんないい意味で日本人離れした厚かましさやトンパチさ、頓着しないところが、岡見のキャラといえばキャラなのかもしれない。

ちなみに薬物違反のヒアリングを控え、試合予定のないソネンではあるが、ジムではフルパワーでトレーニングをしていたそうだ。

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遅ればせながらUFC122「岡見 vs マーコート」試合後記者会見より。

敗れたマーコートは納得いかず

正直言って自分の方が強いパンチを当てていたし、逆に当てられても全然効いていなかった。審判は岡見が試合をコントロールしていたかのように受け取ったのだろう。自分としては勝つためにすべきことはやった。外から見ていた訳じゃないんで、何とも言えないけどね。

試合中には、自分が勝っていると思っていた。ヤツは3度くらいぐらついていたし、テイクダウンをとったのもこっちだ。現時点ではどこが悪かったのかわからない。コーチと一緒にテープで確認してみたい。

コンビネーションがいつものようには使えていなかったとは思う。それが理由のひとつなのかもしれない。なんにせよ、自分はベストファイターの一人であることに変わりはないし、早く試合に戻ってチャンピオンを目指したい。



ダナ・ホワイト、岡見のタイトル挑戦を再度明言

見たこともないようなエキサイティングな試合だったかといわれれば、答えはノーだ。でも岡見は、マーコートという強敵と戦って勝った。

この試合にはタイトル挑戦がかかっていた。タイトルマッチはやらせるよ。



ダナ・ホワイト、退屈な試合はこいつのせいだと、グレッグ・ジャクソン批判を展開。思い切ったことを言うものである。さすが独占企業の社長。

マーコートが空気をよどませた。ヤツがすべったんだ。

マーコートにはすごい才能がある。でも今日の彼は、グレッグ・ジャクソンのキャンプ特有のものだ。あのキャンプはいつでも、セコンドが選手に、勝っていると吹き込んでいる。

さっきマーコートは、自分が勝っていたんじゃないかと言っていた。セコンドはどこで見てたんだ?レスラーに打ち負けているまま、最終ラウンドに入ったんだぞ。勝ってると思うものかね。グレッグ・ジャクソンのキャンプはいっつもこうだ。

いいか、マーコートも岡見も、もうベテランのプロフェッショナルだ。10年前に自分が最初にマーコートを見たとき、ヤツは日本でキング・オブ・パンクラスだった。ヤツはタイトル戦を一度フイにした。やっと巡ってきた今回のチャンスの最終ラウンドに、パンチもキックも出さないというのはどういうことだ?プレッシャーをかけられていたこととは関係がない。プロだろう。タイトルに挑戦したければ最終ラウンドに勝ち取らなくちゃ行けない。



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佐々木亜希「殴る女たち」(草思社)感想

女子格というのは根本的なところで謎な部分がある。「この人たちは何故こういうことをしているんだろう」「どうなりたいのだろう」「どうなりたくないのだろう」といったことが、どうも腑に落ちない。

もっとも女性のやることなすことについて、根本的なところで謎があるのは、なにも格闘技には限らないわけだが、それでも男子の格闘家なら、まだ想像の範囲内であるだけに、違いが気になる。活躍したらしたで、打撃勝負にこだわる藤井はとても謎だし(だって、青木がムエタイにこだわるのとはだいぶん違うだろう)、かといって、MIKUはじめその他大勢のように、ふっと消えてしまうのも謎だ(佐々木さんによるMIKUのインタビューも読みたかった)。

で、この本で取り上げられている11名の選手のストーリーを読むと、まあやっぱりそれぞれのストーリーがあるということであって、何も一般化する必要はないのだが、でもあえて言えば、昔のターザン山本風に言えば、ずいぶんな「マイナーパワー」が感じられるものだなあと思った。もっともV一なんかは屈託のないエリートに見えるし、長野美香などは全般的には恵まれつつも、その場その場の最適化で今日に至るという感じが女性的だったりするので、例外の方が多いくらいではあるが、やはり何らかのコンプレックスにドライブされている場合がいくつかあるようだ。それでも、そのドライブされているさまが、やっぱり男子と比べると違う。開ける場所と伏せる場所がどうも違う。

それと、恋愛の話も開けっぴろげに出てくるのだが、いっときはふらっと流されてしまうこともあるけれど、格闘技に集中し始めると、男を捨ててしまう女子がなんと多いことか。捨てないと、仕事に集中できないものだろうか・・・男は乗っているときには両方はかどるものだが・・・

さらっと読めてしまうようでいて、やっぱり男性はこれを簡単に理解したつもりでは間違いを起こすような気がする。よく読んでみれば、つじつまなど平気であってない。その不思議さを味わうべきなんだろうと思う。

どこかのUストのような番組で、佐々木さんがこの本について語っているのを聞いた(富松選手とアミバ選手と一緒だったやつだ)。そこで、本の制作進行と、辻結花敗退・RENA優勝と言ったリング上の動向とをシンクロさせるのが大変だった、とさかんに強調していた。そんなものかなあ、と思った。個人的には、単行本に速報性はまるで求めない。リング上でなにがあろうと、人物を描いていれば、あとは何が起きようと、こっちで解釈するのに、と思った。それよりこの「少女」的なるものを、直線的で阿呆な男性読者にも少しでも伝わるよう、もっと筆者自身がシャーマンになって導いてほしかったような気はした。そんなことができるのは、この著者だけなのではないかと思われるからだ。それと、エッチなヤツじゃなく、女子目線でいいと思うヤツで良いから、やっぱりカラー写真はほしかった。

小さい可愛い本で、所有して本棚に並べておくと、なーんか楽しい気分になれる。買ってよかった。

殴る女たち 女子格闘家という生き方殴る女たち 女子格闘家という生き方
(2010/10/20)
佐々木亜希

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[格闘技][UFC]岡見vsマーコート視聴者は秋山vsビスピン以上。でも「岡見キャラ立たねー」の問題意識は皆が共有

いや俺も、岡見の話はもういいかな、と思うんだがDREAMにニュースが無くて…。 http://sadironman.seesaa.net/article/169716192.html UFC 122 on Spike TV draws average audience of 2.2 million viewers(MMAjunkie.com)     UFC 122: Marquardt vs. Okamiはアメリカ

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