ラスト10秒のメンタリティ【小見川、勝負に勝って試合に負ける】


 小見川の敗戦シーンを見ていて、かつてNHKが「JUDO対柔道」という対立軸を煽っていたことをふいに思い出し、これは「KAKUTOUGI 対格闘技」の異種格闘技戦なのではないか、という思いを強くした。リーチの短い小見川が至近距離から棒立ちのメンデスにジャブを当て続けるシーンは、格闘技的に言ってメンデスなど小見川の敵ではないことを示しているように思われた。しかし、ラスト10秒で必ずテイクダウンを取られるシーンを見ていると、全体的にKAKUTOUGIのゲームを完璧に作っているのは、たしかにメンデスであったかのように思われた。

このことは秋山にも五味にもうすうす感じていたことだが、実力者小見川のこの「負けた気のしない負け」、勝負に勝って試合に負けたところを見ていて改めて、小見川とメンデスでは、あるいは日本人選手と外人選手とでは、まるで違うゲームを戦っているように感じた。

WOWOWではイナガキ氏が「ラスト10秒のテイクダウン」がジャッジの印象を左右する、と盛んに言っていた。

古い話で恐縮だが、かつて全日本プロレスで一度だけ、「ジャンボ鶴田 vs 長州力」のシングル戦が行われた。結果は60分引き分けだったわけだが、その試合のラスト30秒にジャンボが繰り出した最後の技はなんと「逆エビ固め」なのであった。まさかのセンスに腰が砕けた。こういうシーンで誰もが期待するのは、「最後のリキラリアット」「もう一押しのバックドロップ」など、だめ押しのハイスパットである、というのが、日本人ファンが抱くごく自然な期待感ではないかと思うし、選手もまた、その期待に応えようとするのが、ごく自然なメンタリティなのではないかと思う。

MMAの試合でラスト10秒になったら、僕はごく自然に、逆転一発KOを期待してしまっている。殴り合え!と思う。テイクダウンが来るとがっかりするし、賢いけどずるいと思ってしまう。プロレスと違ってMMAには判定があり、展開によっては最後の数秒を単に押さえ込んで過ごすことが合理的なこともある、ということは、頭では十分分かっているのである。ただ、その場とっさのメンタリティとして、本当にそれを選択して実行してしまう選手がいるというのは、頭では分かっても心が躍らない。これは「プロレス的な見方」というのとも違うと思う。やっぱりどこかで「あっぱれに散る」なものを見たいのだと言うことだと思う。

あるいは、小見川がメンデスに勝つには「プロすぎる」という言い方も出来るかもしれない。

それにしても、「ラスト10秒のテイクダウン」がジャッジの印象を左右するというのは本当のことなのだろうか。これまでUFCを見てきて、確かにそんなことが言えるような気はする。でもイナガキ氏があんまり簡単に、まるで数学の定理のように言うので、それってホントなのかなと、軽くイライラしてしまった。だって、ラスト10秒の一発逆転パンチに賭ける選手には、「もはやテイクダウンを取られたとしても、そこからフィニッシュされてしまう時間もないのだから、思い切って踏み込んで打とう」という姿勢はないだろうか。そんな風に防御を弱めた選手からテイクダウンを取ったからと言って、それってそんなに凄いことなのだろうか。あるいは、ラウンド序盤や中盤のテイクダウンと、終盤のテイクダウンとでは、何が違いはあるのだろうか。ジャッジの認知能力が、直前のことしか覚えていないくらい、弱いということだろうか。

敵が「格闘技」を避けて「KAKUTOUGI」で来るのであれば、日本としてはやはり石井慧を送り込むしかないようにも思う。石井が派手な勝ち方をするとは思わないが、あの金メダリストがKAKUTOUGIのゲームで、そう簡単に負けることもないだろう。


チャド・メンデス def 小見川

小見川の身体はバッキバキ。寄って来すぎのテレビカメラをハエでも追い払うかのようにはねつけ、集中しきった怖い表情。メンデスと比べるとちょっと小柄に見える。1R、メンデスのスピードが凄い。メンデスのローキックが強烈で、小見川にダメージがたまりはしないかと心配になる。2R早々、メンデスのコンビネーションに小見川フラッシュダウン、追撃のパウンドも少し食らう。うーん、小見川のこんな姿はしばらく見ていない。3R、攻めてこないメンデスと、プレッシャーをかける小見川。ガスタンクの残りは、流血している小見川の方が多いように見える。やはり小見川、フィジカルで負けることはなさそうだ。しかしメンデスの時間稼ぎのテイクダウンと、見栄えのパウンドに時間を削られ、先行逃げ切りのゲームプランにはまってしまった。お楽しみはこれからだ、と思った時には敗戦が決まってしまった感じである。


デミトリアス・ジョンソン def KID山本

「狂蜂」のTシャツ姿で、まだ空席の目立つラスベガス会場に入場するKID軍団。このスター選手が一から出直そうとしていることがよく伝わってくる。がんばって欲しいなあ。立ち上がりのKID、コンディションはこれまでになく良さそう。まさに蜂のようなリズムに乗って舞っている。HEROES時代に解説の谷川氏が「KID君は当て勘がいい」と言ってた記憶がよみがえる。今日のKIDはまさにそんな風に見える。しかし2Rくらいから、ジョンソンが軽やかに対応しはじめる。いくら動いても涼しい顔のジョンソンに対し、KIDの表情は時間がたつにつれて「老い」を感じさせるようになっていく。ラウンドのインターバルでKIDのセコンドが映し出されたとき、根性論のようなアドバイスしか行われていないことに不安を感じる。2R以降、好きなようにテイクダウンを取られたKIDが、これといったオフェンスを見せられないまま完敗した。次の試合がどうなるか、という点で、小見川よりもずっと厳しい敗戦だと思う。


ジョン・ジョーンズ def ライアン・ベイダー

ジョーンズが意味の分からないような強さを見せ、またしても幻想を広げてくれた。痩せたジョーンズが太ったベイダーに乗っかっているだけなのに、ベイダーはすっかりたたみ込まれて覆いかぶられてしまい、テレビ画面がジョーンズだらけになってしまうのは不思議なことである。フィニッシュはもはや何をしているのかすらよく分からなかった。「見た目」的には、タイガージェットシンが、レフリーの死角をついた反則コブラクローで相手を押さえ込んでいるシーンにも似ていた。

いつものようにジョーンズは、フライングエルボーやリープフロッグと言ったプロレスムーブも繰り出していた。ああ、そんな風にやれば、リアルファイトでも使えるのねといつも思わされる。


アンデウソン・シウバ def ヴィトー・ベウフォート

鮮烈のフィニッシュはスローで見ると「16文キック」にしか見えない。タイトルマッチでこんなフィニッシュだなんて、想像もつかないアンデウソンの怪勝である。ベウフォートって、大一番をあっさりと落とすことが多い印象があるよねえ。


●UFC126試合後記者会見(オブザーバのサイトで動画を閲覧)では、UFC128でショーグンのライトヘビー級ベルトに挑戦予定だったラシャド・エバンスの負傷欠場が明らかになったため、代役としてジョン・ジョーンズが抜擢されることとなったとのアナウンスがあった。この大会を観戦していたショーグンには、ジョーンズの試合直前になって、対戦相手変更の打診があったという。他方のジョーンズに対しては、ベイダーを破った直後に、ショーグン戦のオファーが行われたという。


●同じ記者会見で、アンデウソン・シウバの次の対戦相手を尋ねられたダナ・ホワイトは、「UFC129でGSPがジェイク・シールズに勝てば、岡見ではなくGSPということになる」と明言した。「岡見のことは後で考える。彼は怒るだろうな」とも述べている。

>そう、岡見は怒っていいし、アンデウソン・シウバにむけてくそったれとか言い続けてもいい。何かアクションを起こして欲しい。なおGSPが負けた場合にどうなるのかについては、ホワイトは明言していない。


●アンデウソン・シウバとヴィトー・ベウフォート、公開計量でのステアダウンは「ステアダウン・オブ・ザ・イヤー」ものだった。



何を激しくやり合っていたのかと、ステージ上でジョー・ローガンに聞かれたシウバは、「あいつは悪いことを言った。つけを払わせてやる」などと説明していた(アンデウソンはあまりにも毎回こんなことを言ってるので笑ってしまった)。レスリングオブザーバーによると、このときアンデウソンが言っていたのは、キック・ユア・アスといった普通の悪口に過ぎなかったという。ただアンデウソンは、戦績やチャンピオンステイタスにもかかわらず、ブラジル国内ではベウフォートの方が有名であることについては、いらだちを隠していなかったという。ブラジル国内でも人気は今ひとつなのか、アンデウソン・・・

*****

文科省、春場所中止を検討 力士ら3人、八百長認める 新たに1人関与疑い(産経新聞)

相撲協会の公益法人格の剥奪も検討されているとのことだ。大相撲が、相撲協会という、いわばアスレティック・コミッションをなくしたら、残されたものは単なるワーク・マッチを見せる一民間企業ということになるのだから、極端な言い方をすればプロレス団体そのものということになる。そうすると、たとえばテレビニュースや新聞で、結果が報じられることもなくなるはずだ。というか、報じられたら逆におかしい。

NHK放映権料収入も途絶え、財団法人としての非課税の特典を失うと、やがて株式会社相撲協会には、フィールズや京楽がスポンサーにつくだろう。そのスポンサーマネーを使って、大相撲がテレビ東京でタイムバイで放送するようになるかもしれない。そうすると視聴率が必要になるから、淡々と相撲をしていても仕方ないと言うことで、やがて力士がテーマ曲に乗って入場してきたり、コスプレをしたり、トラッシュトークや軍団構想を展開するようになる。力士のまわしにはペンタ君とかドンキ君の広告が入る。今年の大晦日は、ダイナマイトや紅白とテレビ戦争だ。一般の人が振り向くサプライズが必要と言うことで、朝青龍が復帰する。対戦相手はボブサップ、サップのマネージャとして中指を押っ立てて登場するは「やくみつる」だ。白鴎あたりは、強いがつまらない試合をすると言うことで、ダイジェスト放送に回され、この扱いに怒った白鴎は荒技を繰り出して対戦相手の腕を折ってしまい物議を醸す。頑固なライターがアンチ商業主義キャンペーンを張るだろうが、そんなこと言ったって売らなきゃ食えねえと一掃されてしまう。ショーアップ大相撲、しばらくは結構おもしろいかもしれないが、われわれプロレスファン・格闘技ファンにとっては、いつか来た道であって、そんな明日なき出し物が長続きするわけがない。早晩、相撲では両国大会は打てなくなり、後楽園ホールに退行していく。おって、力士の携帯メールから、ファイトマネー未払いが発覚する。試合機会を求めて、上位力士がUFCに挑戦するようになる。カンフル剤的な話題は呼ぶが、たいした結果も残せないまま、かえってスター力士を潰されるばかりとなる。海外の投資ファンドが乗り出したりするが、経営者が元力士ばかりのドンブリ勘定・ゴッツァン経営はグローバル・スタンダートにほど遠く、デューデリジェンスをけして乗り越えられない。気づいた頃には新木場でNOAHや新日本と対抗戦だ。もはや客も来なけりゃヤクザも来ない。

自虐的に書いたつもりが、「朝青龍 vs ボブ・サップ with やくみつる」で結構わくわくしてしまっている自分がいるのが悲しいところだが、とにかく、相撲には文化財保護的観点もあるんだろうし、守るべきところはちゃんと守らないと、こういうことになっても不思議はないと思う。


スポンサーサイト

毎週更新!

Ad

Ad

MMA Update